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コンビニが値引き販売をしないのは本社の取り分を増やすためである~コンビニブラック狂想曲

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夕方スーパーへ行くと、20%オフ、半額シールがペタペタとついたお弁当を目にするかと思います。しかし、コンビニではいつになっても値引きシールが貼られることがありません。

なぜでしょうか。24時間営業しているからでしょうか。いえ、そこには本社が利益を得るための大人の事情が存在するのです。

すべての道は本社に通ず

まずコンビニ業界は本社をトップとする明確なピラミッド構造になっていることを理解しなくてはなりません。いわゆるフランチャイズ経営というものです。そしてこの経営構造は、いかに本社が儲けるか、という一点のみを考えて作り上げられているといっても過言ではありません。

パッと見素敵なフランチャイズ経営

例えば山田さんがコンビニ経営を始めるとします。やはり山田コンビニを新たに立ち上げるより、セブンイレブンやファミマなど知名度のあるコンビニの看板を掲げたほうが集客力があるでしょう。山田さんは利益の何割かを本社に献上することで、大手コンビニの看板を掲げることができるのです。

初めてのコンビニ経営で右も左もわからない山田さんに、本社は経営ノウハウ、マニュアル、仕入れルートの提供などで支援してくれます。初心者の山田さんでもコンビニ経営に乗り出すことができる理由がここにあるわけです。ああ、素晴らしきフランチャイズ経営。ありがとう本社。
 

最高で利益の76%!?ぼったくり過ぎる献上金

さて、素晴らしきフランチャイズ経営の対価としてコンビニオーナーの山田さんは利益の何割かを本社へ納めなければなりません。この献上金の計算方法に恐るべき罠が待ち構えているのです。

さて、本社へ納める献上金ですが、その計算方法は、月額総利益〇〇%、といった形で計算されます。果たして何パーセントというのでしょうか。

コンビニ業界一位、セブンイレブンを例に見てみましょう。
 

月額総利益に対して

・250万円以下であれば、56%

・250万~400万円であれば、66%

・400万~550万円であれば、71%

・550万円以上であれば、76%

(「なぜ、会計嫌いのあいつが会社の数字に強くなった?」村上裕太郎より引用)
 

どうでしょうか。なんでしょうかこの累進課税性は。

売り上げが大きくなるほど本社にもっていかれる割合も増えるので、売り上げが大きければ自分の利益が増えるといった単純な世界ではないのです。しかも、最高76%です。
累進課税ですら、最高45%だと言うのになんという高さでしょうか。ローソンは最高60%、ファミマは最高65%とセブンイレブンほどではありませんが、どこも似たような仕組みをとっています。
 

本社に献上したら赤字に?なぜこんなことに?

先ほど月額総利益の76%が本社に持っていかれる、と書きましたが、この総利益というものの計算にも信じられない罠が仕掛けられています。

利益=売り上げ-コスト

ということに異論の余地はありません。お弁当を300円で仕入れて500円で売ったら利益は200円です。

では、次のケースを考えてみましょう。山田さんはお弁当を100個300円で仕入れました。仕入れ総額は3万円です。500円で販売しましたが、70個しか売れませんでした。総売り上げ額は3.5万円です。では問題です。利益はいくらでしょうか。

普通に考えれば、3.5万-3万円で5000円ですね。何とか黒字で山田さんも一安心です。しかし、コンビニはそのようには計算しません!!コンビニがコストとして認めるのは、売った70個分のお弁当の仕入れ値だけなのです!!少しわかりにくですね。整理しましょう。

まず売り上げは3.5万円。ここは変わりません。
コンビニ本社が計算する仕入れ額は、売れたお弁当70個×300円の2.1万円です。
つまり、利益は3.5万円-2.1万円=1.4万円となります。
この"利益"1.4万円の50%、つまり7000円をを本社に献上します。

おや。おかしいですね。実際のところ山田さんの手元には5000円の利益しか発生していません。それにも関わらず、7000円の献上金を本社へと差し出します。すると、献上金を支払ったあと、山田さんは2000円の赤字になるのです。

何とか赤字を回避せねば

山田さんは真っ青です。

何とか赤字を回避しなくては破産です。

そのためには、何としても売れ残しを出さないようにしなくてはなりません。

上のケースで山田さんは、お弁当を値引きして原価割れの200円で販売する最終手段に出て、余っていた30個のお弁当を売ることができたとしましょう。

30個を200円で売ると、3000円の赤字ですが、70個を500円で売った黒字5000円があるので、最終利益は5000円-3000円で2000円の黒字です。
全部売れたので、100個すべての仕入れ額を本社に認めさせることができ、献上金も2000円の50%の1000円となります。
献上金を払ったあとも1000円の黒字を確保できました。ハッピーですね。
 

怒りの本社

ここで苦い顔をするのは本社です。値引き販売せず、30個売れ残っていれば、7000円もの献上金をゲットできたのに、山田の野郎が値引き販売などしたせいで献上金が1000円になってしまいました。許せません。

コンビニオーナーに勝手な値引きを絶対にさせるな!!!定価で売れないのであれば、売れ残せ!というのが本社の本音なのです。

セブンイレブンは2009年にフランチャイズ契約解除を匂わせて値引き販売をやめさせたことが公正取引委員会から問題視されたり、2013年にはコンビニオーナーが不当に値引き販売を制限されたとして、裁判を起こし勝訴したりしていますが、コンビニで値引きシールを見ることは未だに少なく、この状況は大きく変わっていないと推測されます。

ここまで読めば、コンビニで値引き販売が行われない薄暗い大人の事情が理解できたのではないでしょうか。

本社に利益を搾り取られるコンビニオーナーの図がはっきりと浮かび上がってきます。売り上げが増えれば、本社へ取られる割合が増え、売れ残りを出せば赤字へと追い詰められ、値引きしようとすれば本社に睨まれるのです。

 

私たちの生活を豊かにするコンビニですが、近いうちにコンビニオーナーの反乱が起きるかもしれません。

せめて、みなさんもコンビニに行った際には売れ残りそうな商品を買ってあげてください。そしてもしみなさんがコンビニオーナーになるときは、契約事項を熟読することをお勧めいたします。

 

今回はこちらの本を参考にしています。詳細知りたい方はぜひ手に取ってみてください。