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デザインシンキング(思考)とは?WiiとiPodを生みマッキンゼーも取り入れたその手法とは?

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マッキンゼーも取り入れたデザインシンキング

ビジネス界隈の流行に敏感な方は、「デザインシンキング」という言葉を一回は聞いたことがあるのではないでしょうか。

~シンキングといえば、ロジカルシンキングが有名でしたが、よりイノベーティブなアイディアを生み出すことができる手法として、デザインシンキングが注目を集めています。

デザインといってもパッケージのデザインをするわけではありません。その証拠にデザインとは無関係そうな外資系戦略コンサルティングファームマッキンゼーが、2015年にデザインファームのLUNARを買収しています。

他にも博報堂がデザインシンキングを最初に提唱したIDEOに出資したり、米国金融大手のキャピタル・ワンがAdoptive Pathというデザインファームを買収したりと、有名企業によるデザインファームの買収・提携が相次いでいます。
 

そもそもデザインシンキングってなに?(What)

デザインシンキングという言葉を世に広めたのは、アメリカのデザインファームIDEOのCEOであるティム ブラウンだと言われています。
彼によればデザインシンキングとは、「デザイナーの感性と手法を用いて、顧客価値と市場機会の創出を図るもの」とのことです。それっぽいけど何を言ってるかよくわからない典型的なセリフですね。
 

もっとわかりやすく言いましょう。デザインシンキングとは

「ビジネス上の問題解決を異分野の人々が協力して、再現性のあるプロセスで解決する。このプロセスのこと。」
 

つまり、デザインシンキングはロジカルシンキングのような思考方法というよりも、多くの人が協力して新製品開発や新規事業立ち上げといったビジネスを成功させるためのプロセス、と理解したほうが間違いがありません。
 

デザインシンキングでは何をするの?(How)

デザインシンキングはプロセスだ、と先ほど説明しました。では具体的にはどのようなプロセスを踏むのでしょうか。大きく以下の5つのプロセスを繰り返すと思ってくれれば、問題ありません。

  1. 顧客を観察する
  2. 顧客が何を求めているのか理解する
  3. 顧客のニーズを満たせる商品・ビジネスのアイディアを出す
  4. 素早く試作品を作る
  5. ユーザーテストを実施(このあと場合によって1に戻る) 


デザインシンキングが最も重視するのが、顧客が何を求めているのか、というユーザー視点です。

みなさんはエスノグラフィという学問をご存知でしょうか。
文化人類学の一領域で、例えばある部族を徹底的に観察することで、人々の振る舞いや行動を理解し、その裏側にある文化・価値観を明らかにする、といった手法をとる学問です。

このエスノグラフィの視点をデザインシンキングでは取り入れます。
まず顧客が何を求めているのかを観察、インタビューなどを通じて理解します。それを基に商品やコンセプトをつくり、早い段階で試作品をつくることで最も重要なユーザーの評価を早期に得ます。そこで得たユーザーからのフィードバックをもとにまた同じサイクルをまわしていくのです。

なぜデザインシンキングが注目されているの?(Why)

イノベーションの創出】

 今までの製品開発は、市場規模や成長率を分析し、どこに有望な市場があるかを特定しようとするマーケティングスタイルが主流でした。しかしこれでは、他社が成功したからうちもやるといった二番煎じになりがちで、イノベーションと呼ばれるものは起きにくかったのです。

デザインシンキングで重要なのは1Stepが「顧客を観察する」になっていることです。

顧客に「こういった商品があったら買いますか?」と聞きに行くのが1Stepではないのです。顧客はドリルがほしいのではない。壁に穴をあけたいのだ。とはよくいったもので、顧客を観察することで、穴をあけたい、という真のニーズを理解しようとします。
 

この真のニーズを理解できれば、このニーズを満たすためにどうしたらよいかを考えていきます。

他社が成功した、市場が伸びてる、そこに沿った製品を開発するぞ、とは根本的にアイディアの広さが変わってくるため、イノベーティブなアイディアが生まれやすいと考えられているのです。
 

デザインシンキングの成功事例

AppleiPod

AppleiPodを開発するにあたって社外のデザイン専門家や心理学者、人間工学の専門家などを動員し、短期間(11か月)で開発を行ったとされています。

まずAppleは顧客を観察します。するとユーザーの多くがCDをパソコンに落とし、さらにそれを音楽プレーヤーに移すことを面倒くさいと感じている、ということが明らかになります。

また「そのときの気分に合わせて好きな曲を聞きたい」というニーズがあることも発見します。

その結果できたのが、「すべての音楽をポケットに」をコンセプトとし、自動でPCと同期する機能を持ち合わせたiPodだったのです。

ニンテンドーWii

Wiiの開発で特筆すべき点は、社員の家庭の観察を最初に行った、という点です。この観察を通して「ゲームをする子供は家族が団らんするリビングの滞在時間が短い」、「ゲームによって家庭の関係が希薄になる」という問題点が明らかになりました。

そこで、ニンテンドーはこの結果を逆手にとり「家族みんなで楽しめる」というコンセプトを打ち出し、従来にないイノベーティブなWiiという商品を開発したのです。

まとめ

このようにデザインシンキングとは、デザイナーや人間工学の専門家など多様な分野の人を巻き込み、イノベーティブなアイディアを創出するためのプロセスであると理解して頂けたかと思います。
 

ポイントは顧客観察を通じて顧客の真のニーズ、抱える問題点を把握し、それを解決するコンセプト、製品を生み出す、ということです。従来の製品や他社の成功した製品といった枠組みにとらわれないため、より斬新でより顧客に満足してもらえる製品を生み出せるというわけです。
 

もし新規製品を開発することになったら、市場分析・競合分析に終始せず、頭を柔らかくするためにデザインシンキングを取り入れてもよいかもしれません。