現役戦略コンサルタントが語るブログ

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男もすなるブログといふものを元外資コンサルもしてみん。なんやかんやで今は起業した会社の経営者。

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なぜ東大を出るようなエリートが自殺を選ぶのか。なぜ会社辞めればいいじゃんが通用しないのか

2015年に電通に勤めていた高橋まつりさんが自殺を選んだことは大きなニュースになりました。東大を出るほど、そして日本を代表する企業に就職できるほどに優秀な人がなぜ自殺という道を選ばざるを得なかったのでしょうか。

会社辞めればいいじゃん。という声が聞こえてきそうです。

私も以前までそう思っていました。

ただ会社に入って働く中で、私自身うつ病の入り口が見えるくらい追い込まれた時期があり、自殺という事象がやたらと近くに感じられました。そのとき自分がなぜちらっと自殺がよぎるくらいに追い込まれていったのか、そのときどんな思考回路に陥っていたのか、ここに書いておこうと思います。

追い込まれがちな激務職種「外資系」

東大卒、みたいなエリート層がなぜ自殺を選ぶのか、ググってもろくな記述が出てきません。少なくとも自分はこうやって追い込まれていった。そしてそこにこんな要素が加わっていたらたぶん本気でやばかった。そういう私の経験にしっくりくる記事が1つも見当たらなかったので、なら自分で書いておこうと思った次第です。

では早速、精神的に追い込まれていったステップを3つにわけて解説していきます。

①激務だが一生懸命仕事をし、それを全否定される

外資投資銀行コンサルティングファーム、そして有名な大企業に勤務している人にとってはある程度の激務は避けられないものです。初めに言っておくと、激務だけでは追い込まれません。以前、毎日0時過ぎまで仕事をしていたプロジェクトにいましたが、チームメンバーが本当に良い人たちでほとんど苦に感じませんでした。

ですが、激務なうえにそこでこなした仕事を徹底的に否定されるとなると話が変わってきます。そして、そこに人格を否定されるかのような発言が上乗せでくると、いよいよまずいことになってきます。

当時1年目だった私は、クライアントの現場に1人で放り込まれ、とあるプロジェクトのPMO、つまりプロジェクトの管理を任されました。プロジェクトの管理なんてしたこともない新卒1年目ですから、当然ぽろぽろとボロを出します。何とかしようと土日に出勤して仕事を巻き取ったり、朝5時まで仕事をしたものの、ついにクライアントからもっとこういう風にしてほしい、といったクレーム(要望?)があがりました。

そのとき先輩に言われたのが

  • コンサルとして仕事している価値がない
  • まるで信頼できない
  • 小学生並みのアウトプット
  • もっと自分の仕事ぶりを考えたほうがいいですよ

といったことでした。本当につらかった。

まあイケてない仕事の進め方をしていたのは確かにそうなんですが、今の論点はそこではないので置いておきます。笑

イケてないなりではありますが、精一杯頑張った結果を「無価値」「小学生」と断定されるとかなりメンタルに来るものがあります。大きな失敗と罵倒。これが第一ステップです。

②ああ。自分ってこんなにも無能だったのか。と気づく

自分が「無価値」で「小学生並み」の仕事しかできないと言われれば、それはプライドはずたずたです。こういう状態では最初は無意識的に「俺が悪いんじゃない」と言い訳がましくなるフェーズがやってきます。私の場合は「そういう言い訳がましいところ、ほんと直した方がいいですよ」との先輩の一言でぶった切られましたが。笑

そして「ああ。この人はほんとに俺のことを無能だと思ってるんだなあ」ということを先輩の言葉や態度の節々から感じるようになります。

こんな感じのメンタルで仕事をしているとパフォーマンスが上がりません。常にびくびくし始めます。そしてまたミスを犯します。ここまでくると自分でも自分に嫌気がさしてきます。

そのうち印刷すべき資料を間違える、みたいな自分でも言い訳のしようがないしょうもないミスを犯したりして、本当に自分はどうしようもない無能であると自分のなかでも結論が出ます。
客観的な無能評価と己が無能であると自分自身も納得せざるを得ないファクトが生まれ、自己評価も「自分は無能」で決着。これが第2ステップです。

③すべてのミスの原因が「自分が無能だからである」に帰着する

さて、客観的にも主観的にも自分が無能であることがわかりました。そうするとどうなるでしょうか。

あらゆる仕事のミスの原因が1つに集約されます。そう、「自分が無能だから」です。会議のアジェンダをうまく設定できないのも、資料がうまく作れないのも、議事録すら注意されるのも、何もかもは「自分が無能だから」うまくいかないのであると帰着します。

このフェーズにまで来ると、本当に会社に行くのが怖くなります。睡眠不足か過剰睡眠、食欲がなくなるか異常に食欲が出るか、身体的にも異変をきたし始めますし、著しく気分が落ち込むなど精神的にもちょっとそのへんの「会社行きたくない」どころじゃないレベルで会社に行きたくなくなります。

④会社辞めて転職しても絶対うまくいかない気がしてくる

そして、この状態の本当に怖いところはどんな解決策も通用しなくなることです。

「ミスの原因はこれをしなかったことだから、次からはこうすればうまくいくよ」と優しい上司に言われたとしましょう。ダメです。ミスの原因は「私の無能」にあるのですからどんなやり方をしても「私が無能」である限りうまくいかないのです。

「会社がそんなに嫌なら、追い込まれる前に辞めたほうがいいよ。自殺するくらいなら会社辞めなよ」

意味がありません。今のつらい状況の原因は「私が無能」であることが招いた必然的な結果です。つまりどんなに会社を変えても、環境を変えても「私が無能」である以上は必ず今のようなつらい状況が再現されるはずです。

「私が無能」であることが諸悪の根源であり、「私の無能」を解決しなくては人生は永遠にうまくいきません。しかし、私は無能なのです。客観的にも主観的にも。

もう本当に自信がなくなりました。どこに転職してもまったくうまくいく気がしません。もはや積極的に問題を解決しようという気力さえなくなってきました。そんな私はなんてダメなやつなんでしょうか。しようがないのです。私は無能ですから。あーあ。なんかもう何もかもうまくいかないんだろうなあ。明日も明後日も会社にいって、先輩から蔑まれた視線を浴びて仕事をするのか。死んだほうが楽しい。

生きているつらさ>死ぬことのつらさ

であり、私が無能である以上、どんなに環境を変えても生きているつらさは必ず再現される。

私の場合、こんな感じで追い込まれていきました。

はい、まとめのスライドです。

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なんで耐えられたのか

私の場合、幸運なことがいくつかありました。

  • プロジェクトの期間が限られているから、あと数か月耐えればこのプロジェクトから出られる、という逃げ道があった
  • 愚痴れる友達と同期がいた
  • 自分はこんなメカニズムで追い込まれてきている、と分析してそれを話せる友達がいた
  • 6時間は毎日寝られるくらいに労働環境が落ち着いてきた
  • 以前仕事をした上司からの定量的な評価の通知

以前一緒に仕事をした上司から、自分の評価を点数という定量的な形で教えてもらう機会がありました。思いのほか悪い評価ではなく、高い評価をもらっていました。客観的「私は有能」評価をもらえたことは何よりも大きく、「私は無能」スパイラルを断ち切るきっかけになりました。

逆に言えば、この状況にあとどのくらい耐えればいいのかもわからず、毎日ろくに寝られないくらい仕事があり、愚痴れる同期や先輩もいなかったなら、たぶんやばかったでしょう。

当時は交通事故にあって骨の2、3本でも折れば1か月くらい休めてそのままプロジェクト抜けれないかな、スクーターあたりをレンタルしての自損事故がいいかな、とわりと本気で考えたりするくらいにはやばかったです。

私の追い込まれ方が私以外にも一般化できるものなのかはわかりません。

そして確たる解決策も提示できていません。

でもきっと仕事に追い込まれてこのままでは鬱病一直線、、という優秀な人たちが世の中にはたくさんいるはずです。そんな人たちがふと自分の心を冷静に見るきっかけになってもらえたら。追い込まれているのはあなただけじゃないよ、と少しでも心強く思ってもらえたら嬉しいです。

今日はこんなお話でした。ではでは。

 

コンサルって激務なの?はこちら。

techhack.hatenablog.jp