現役戦略コンサルタントが語るブログ

元コンサルがすなるブログといふもの

男もすなるブログといふものを元外資コンサルもしてみん。なんやかんやで今は起業した会社の経営者。

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いつかコンサルが経営者の頭を乗っ取る日

以前から考えていた問いに

「コンサルが導き出す答えはチームやパートナーによって異なってしかるべきなのか、あるいは誰がリードしようとも一つの最適解へと収束するべきなのか」

というものがありました。この問いを深掘って考えたところ、最適解を導出することが基本であったコンサルは、まさにいま個人の色のある答えを出す存在へと変わろうとしているフェーズにいるのではないかと思い至りましたので、そのストーリーを綴りたいと思います。

コンサル1.0 「最適解を出すロジカルマシーン」

コンサルの問題解決の方法の基本は、ロジックです。したがって、正しいアプローチで正しいロジックを展開すれば経営課題に対する答えは1つの最適解に収束しうるはずです。チームによってだどりつく答えが違うとしたら、それはロジックが間違っているか、参考にした情報が間違っているか、といった議論になるはずです。

市場規模と成長率と競争の激しさとクライアント企業へのシナジーから考えて、XX領域に進出するのが最適である。

もしAチームとBチームで答えが違っていたら、参考にした市場規模の数値が違っていた、あるいはAチームでは競争の激しさを考えていなかった、という点でその差異が説明できる、というイメージです。

初期の外資系コンサルは、欧米発のロジカルな思考法と分析力で最適解を導出する、そういった存在だったのではないでしょうか。

コンサル2.0 「寄り添うカウンセリング型コンサル」

最近、コンサルファームで常駐型のプロジェクトが増えている、という声を聞いたことはあるでしょうか。定量的な情報は持ち合わせていませんが、定性的な印象ではこれは確からしく感じています。

常駐型とは、クライアントのオフィスにその名の通り常駐し、親身に寄り添うスタイルのプロジェクトです。非常駐型は、コンサル本社に勤務して週に何回かクライアントと会議をするような進め方です。

常駐型のプロジェクトは、「寄り添うカウンセリング型コンサル」と呼ぶのがふさわしいように感じます。

あなたが困っているのはこれで、こういうことがやりたいのではないですか?こういった内容を役員には報告したいのですよね?ロジックの通った美しいストーリーにして語れるようにしましょう。美しい資料もセットでつくりましょう。(下っ端コンサルは資料作成ばかりするので、高級万年筆、などと揶揄されたりします)

コンサルとしては、寄り添う相手を、部長より本部長、本部長より役員、役員より社長、と可能な限りレイヤーを上げていくことが基本戦略です。

ここでのコンサル像は冷徹なロジカルマシーンではなく、クライアントの経営層が何を考えているのか、どんな考えを好むかを徹底的にインストールし、それに合わせて綺麗なストーリーをつくりあげる、そういう存在です。コンサル言いたいことドリブン、からクライアント言いたいことドリブンに重心が移っている、と言ってもいいかもしれません。

個人的には、こういったプロジェクトはまさに近年増えている印象があります。

コンサル3.0 「経営者の頭を乗っ取るコンサル」

ここからは私の妄想も多分に含まれます。

コンサル2.0の寄り添い型コンサルでは、大きく2つの重要なアセットが構築されます。クライアントの経営層が好む考え方がインストールできること、そして経営層からの信頼を得られることです。

コンサルとして、これをやるべきだ!と思い至っても、それを話す先がなければ何の意味もありませんが、上記の2つのアセットがあれば、経営層にその考えを話すことができます。経営者が好みそうなテイストに味付けまでして。つまりコンサルの考えを企業に直接送り込む、太いパイプをつくることがコンサル2.0フェーズの役割です。

一方で、ここ数年でしきりに聞く経営テーマに、「ディスラプターが想像を超えるスピードと頻度で登場して業界構造を変える今、従来のありきたりなロジックでは未来を語ることは限界、答えのない問いが増えている」というものがあります。

各ファームはこのテーマへの対応策として、右脳思考・デザインシンキング、といったアプローチも試していますが、要するに個人の色のある、ロジックよりカリスマ性を感じられるようなストーリーで経営方針を語りたい、ということでしょう。

ロジックベースのストーリーであれば、信頼のおけない外部の人間がのたまうことでも、ロジックが信頼できれば信じられます。個人色のあるストーリーはどうでしょうか。従来よりも信じることが難しくはないでしょうか。

このフェーズで重要なことは2つになります。1つ目は個人色のある面白いストーリーを考えられる人材がいること、2つ目はその面白いストーリーをクライアント企業に送りこめる太いパイプ(コンサルを信頼して話を聞く経営層)が存在していること、です。

「コンサルの君から話を聞いて、まさに私はそんなことがやりたかったのだと、そう思えてきたよ。」、経営者の頭に違和感なく溶け込むような味付けに整え、プレゼンし、最後にこう経営者から言ってもらえたらコンサルの勝利です。

大企業の大方針をコンサルが決めにかかる、コンサルとしてはこれ以上なくワクワクする仕事ですし、こうなれば多くの実行プロジェクトも走らせることができ、マネタイズとしてもうまくいくでしょう。

常駐型プロジェクトで疲弊しているコンサルのみなさんは、カウンターパートのお偉いさんの考え方、好みを徹底的に理解し、そのプロトコルに合わせてこちらの考えを伝え、納得してもらう、まずはここをゴールにしたら道が開けるかもしれません。ここができるようになれば、コンサルが彼らの頭を乗っ取る日も近いのです。(事業会社で生き抜くための最強の戦い方でもある気がしていますが。笑)

 

クライアント企業としてはどうでしょうか。経営者の後ろにコンサルが透けて見えるようになったとき、それは企業としてあるべき姿なのでしょうか。それはその企業を成功に導くのでしょうか。まだ私にはわかりません。考えが深まったらまた書きます。

 

後半は随分と大きな風呂敷を広げてストーリーを語りました。共感できた部分はあったでしょうか。ストーリーが破綻している箇所はあったでしょうか。

やはりコンサル2.0・常駐型プロジェクトはそんな大げさな話ではなく、増えた人員を放り込んでカネを稼ぐには行き先としてちょうどいいから増えて注目されてるだけでしょうか。そこに長期戦略はないのでしょうか。

みなさんの議論のきっかけにして頂き、その議論の声を聞くことができれば望外の喜びです。

それでは。

 

PS

こんな本もありますね。

コンサル一〇〇年史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)

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