現役戦略コンサルタントが語るブログ

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男もすなるブログといふものを元外資コンサルもしてみん。なんやかんやで今は起業した会社の経営者。

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戦略コンサルが薦める読んでよかった本

戦略コンサルは普段どんな本を読んでいるのか?私の本棚からお薦めできる本をピックアップしてご紹介します。

コンサル本は、いろんな方がまとめてくださっていますので、”教養をつける”といった側面を意識したチョイスになっています。偉そうなことは言えませんが、個人的に読んで世界が広がったなという本をピックしているので興味あるものがあれば手にとって頂ければ。

これからも継ぎ足し継ぎ足し、秘伝のたれのごとく更新して増えていく予定です。

※他ジャンルのまとめもつくりました! 

 

目次 

 

コンサルスキルを身につける本 

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

コンサルファームに入ると読め読めと言われる、やたらと読みにくい翻訳のこの本。最初に読んだときは、ウィットに富んだ抽象論という印象があったのですが、実務経験を数年余り積んでからこの本を読みなおすと、非常に刺さる言葉がいくつも出てきます。

問題を解いた先には、問いに紐づいた新たな問題がある。

誰に解かせるかが重要であることもある。彼らの問題ではなく、彼ら一人ずつの問題に変えることで解決する問題もある。

「あーーーー、それよそれ。わかりみが深い。なるほどなあ」と共感を持ってしみじみとこの本を読めたとき、あなたはコンサルになりつつある!?

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

  • 作者: ドナルド・C・ゴース,G.M.ワインバーグ,木村泉
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 1987/10/25
  • メディア: 単行本
 

 

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

社会人なら誰しもが読め読めといわれるこの本。

端的に言えば、解くべき問いは何かを明確にしてから問題を解きに行け、というメッセージの本です。コンサルの文脈でこの本を考えると、特にマネージャーを目指すにあたって大切な要素が解説されているのではないかと思います。

コンサルは大きく3つの職位に分けられます。クライアントのCXOと関係を築き、クライアントの悩みを拾いあげてプロジェクトを受注してくる"パートナー"、プロジェクトにおいて解くべき論点を設定してストーリーを描き実際にプロジェクトを進めていく現場責任者”マネージャー”、マネージャーの下でリサーチや分析・資料作成をせっせと行う実働部隊”スタッフ”の3つです。

この中でマネージャーに求められる最たる能力が「解くべき問いを正しく立てる能力」だと感じています。スタッフのうちから、これを意識しながら仕事を進めることが本質的な成長につながるでしょう。

定期的に読み返したい本です。

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

  • 作者: 安宅和人
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2010/11/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

ストーリーとしての競争戦略

コンサルになる前は、コンサルといえばロジカルシンキングだと思っていました。実際、ロジックも大事ですが、それよりもはるかによく言われるのがストーリーがつながっているかどうか、という点です。ストーリーをつなげるための必要条件がロジックが通っているということだと最近では考えています。逆にいえば、ロジックが通っているだけでは良いストーリーとはいえないということです。

そのストーリーというものを徹底的に紐解き、解説したのが本書になります。よしストーリーに共通しているものはなんなのか、具体的にどういった戦略が良いストーリーなのか。コンセプチャルな話ではなく、経営戦略という文脈の中で豊富な事例をまじえて話が進んでいく点もgood。戦略コンサルの一つのバイブルではないかと思っています。

 

考える技術・書く技術

論理的に書くというテーマでは右に出るものがない本。コンサルは全員読まされる名著であり、「伝えたいキーメッセージを頂点とし、その下をなぜそのメッセージが言えるのかというWhyへの回答で構成したピラミッド構造で思考せよ、記述せよ」ということが説かれた本です。

コンサルは、パワーポイントで資料をつくることがとにかく多いんですが、箇条書きベースで資料のストーリーを書く「サマリ」というものも非常に重要度が高いです。答えるべき問いは何か、それへの答えの仮説は何か、仮説を支えるファクトとしてどんなものが考えられるか、といった資料で伝えたい内容を論理的に書いたものがサマリであり、役職が上がるにつれてサマリの重要性が増します。コンサル1年目で1回、マネージャーが見えてきた頃にもう1回読むべき本だと感じています。

 

世界基準の上司

あなたはコンサルをしていて、潰れそうになったことはあるでしょうか。私は余裕であります。

潰れそうになった経験を持つ人を少しでも減らすために、部下を持つコンサルは全員この本を熟読すべきかと思います。どう指示を出すべきか、どの粒度の細かさがベストなのか、アウトプットイメージはどう握るのがいいのか。明日からすべてつかえます。

最後に本からの引用です。

"「おれも今までこうやって言われて育ってきた」「その怒りのエネルギーを仕事にぶつければいい」、そんなことを思っている人がいないことを心から願っていますが、もしいたとしたら今すぐ即座に直ちにこの瞬間にその考えを改めてほしいです。"

強面上司のあなたは、毎日これを100回読んでからオフィスに来てください。下からのお願いです。

世界基準の上司

世界基準の上司

 

 

伝わる・揺さぶる!文章を書く

「論点を書く。サマリを書く」ということに悩んでいるときに、以前一緒に仕事をした尊敬する上司から勧められた一冊です。本当に、本当に良いことが書いてあります。

  • 書く文章にはゴールがある。誰に読まれて、その結果どのような行動を相手に起こさせるのか、ちゃんと考えられているか
  • 良い答えを導くためには良い問いが必要である
  • 知識や情報を並べただけで、自分の意見がない文章を書いていないか
  • 自分の意見をかけないのは、以下が理由だ
    ①大きすぎる問いを相手にしている
    ②インプットが不足しており、意見を言う資格がない
    ③意見を言うことによって生じるリスクを引き受けるのが怖い

これらの言葉が刺さったあなたはすぐに買って読みましょう。

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)
 

戦略がすべて

戦略とは何か、具体的なイメージを持てない人が多いと思いますが、この本ではAKBの事業戦略からキャリア戦略まで、幅広い戦略のケーススタディが取り上げられているのでこの本を読めば戦略について具体的なイメージを持つことができるでしょう。
g>特に気づきとして重要だと感じた点は、戦略とは企業の経営企画部にいる人や経営層だけでなく、個人のキャリア戦略といったレベルで身近なものであるというメッセージです。
以前、「俺がやればどんな案件も戦略ジョブになるんだよ」と偉いコンサルの方がおっしゃっていた記憶があるのですが、どんな課題に対してもまさに戦略的に考えるというアプローチが取れるということを示した一言かと思います。個人・業務・経営・社会、あらゆるレベルで利用できる価値のあるスキルとして、”戦略的に考える”ということをとらえなおすことができる良本です。

戦略がすべて (新潮新書)

戦略がすべて (新潮新書)

  • 作者:瀧本 哲史
  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: 新書
 

 

 

世界の経営学者はいま何を考えているのか

最近、雑誌やTVなど様々なメディアで活躍されている新鋭の経営学者である入山先生が名をあげるきっかけとなったヒット作。

コンサルは経営というフィールドに近い職業ですが、だからといって経営学を学び、最新の知識を取り入れているような人は稀です。むしろ、アカデミアと実ビジネスの隔たりの強さを感じます。いまだにマイケルポーターかドラッカーあたりしか経営学といって浮かんでこないのがその証拠でしょう。

この本では、アメリカで経営学のPhDを取られたばかりの著者が、世界の経営学ではこんなテーマを扱っている、こんな論説が主流になりつつある、といった内容を丁寧に紐解いていきます。とにかく平易な文章でわかりやすく、隔絶されている経営学のアカデミアと実ビジネスをつなげようという意欲が感じられて私は大好きな一冊です。

組織の記憶力を高めるためには?

なぜ経営者は買収額を払いすぎてしまうのか?

日本人は本当に集団主義なのか?それはビジネスにとってプラスなのか?

事業会社のベンチャー投資に求められることとは?

など、おそらくみなさんの関心にヒットするテーマを扱っているのではないかと思いますので、ぜひ手に取ってみてください。

 

BCGが読む 経営の論点2019

あまりにダイレクトなネーミングなので、天邪鬼タイプの私は思わず避けてしまいそうになるこの本ですが、やはりこのくらいは読んでおいて損はないです。

金融、製造、物流、自動車など幅広い業界のことが記載されているため、普段接していない業界のトレンドや業界課題、解決の方向性が伺い知れます。

何が書いてあるのかなワクワク、というよりも自分の知識の点検をしつつ、知らないところをクイックに吸収するのにちょうどよい、そんな一冊です。

毎年買ってしまう。(経費で落ちるなら。笑)

BCGが読む 経営の論点2019

BCGが読む 経営の論点2019

 

 

BCGが読む 経営の論点2020

BCGが読む 経営の論点2020

  • 発売日: 2019/11/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル

AIの発達によって、人間の職が奪われる。こんな言説が飛び交う時代ですが、あなたはこの意見に反論するならどんなロジックを展開しますか?

本書では、Human vs Machineの二項対立ではなく、人間と機械が協働する領域をミッシングミドルと名付け、その領域の拡大によって人間の新しい雇用は生み出され、高い付加価値を生みだせるのだと提唱しています。

例えば、チェスはマシンが人間を超えたことが有名ですが、どうやらマシンと人間が協力したときが一番強いようなのです。こういった協力をすることで更なる価値を発揮できる領域は多く、それは新しい仕事としてこれから顕在化してくるはずです。

当たり前のようで、AIと人間が協力する領域をコンセプト化した書籍はなかったように思うので、なかなか良い仕事しているのではないでしょうか。

HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル

HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル

  • 作者: ポール・R・ドーアティ,H・ジェームズ・ウィルソン,保科学世,小林啓倫
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2018/11/23
 

 

思考と心を整理する本

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

コンサルスキルというよりも、豊かな人生を送るための思考方法が書かれた本といった方が正確かもしれません。ただよくある「よい人生を送るために・・」系の本と違い、知的好奇心をくすぐる学術的な裏付けの紹介とロジカルな文章に大変好感が持てます。

飛行機が予定通りのルートを寸分たがわず飛ぶ確率は0%。飛びながらの微調整が人生にも大事、など。

個人的には昨今の日本の独立・フリーランスブームに刺さるこちらの言葉がお気に入りです。

「どこにも属さない人生を想像すると、あこがれの気持ちやロマンチックな空想をかきたてられるかもしれない。だが、属する組織を持たないと社会があなたを拒絶しようとする。無情な逆風が吹き、ほとんどの人は打ちひしがれる。輝けるのはほんの少数だ。」

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

  • 作者: ロルフ・ドベリ,安原実津
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2019/04/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

嫌われる勇気

アドラー心理学を世の中に広めるきっかけとなった本。

コンプレックスの塊のような男と哲学者が対話していくという形式で進んでいきます。対話形式であるため、これはAudibleで聞くのも非常におすすめです。

アドラー心理学の画期的なところは、原因論を否定し、目的論を主張したところかと思います。人間はむかついたから怒るのではなく、相手を威圧し自分の主張を通すという目的のために怒るというアクションを起こすのだ、という主張です。

原因論の最たるものはトラウマですが、アドラーはトラウマを自分の今の状態を正当化するのに都合がいいから利用されている見せかけの因果律だと切り捨てます。なかなか極端な主張に見えますが、この主張からは変わろうと思ったならば過去に関係なく変わることができる、というメッセージが抽出されていきます。

この本を読むときっと少し心が軽くなると思います。

嫌われる勇気

嫌われる勇気

 

 

苦しかったときの話をしようか

P&Gのアメリカ本社でパンテーンのブランドマネージャーを務め、その後USJに参画しハリーポッターをはじめとするUSJの大改革を主導した日本を代表するマーケティングのプロ、森岡さんによる一冊。

森岡さんの娘さんが就活を迎えるにあたって書かれたプライベートな手紙がもとになっており、ご自身がどのような意識で仕事をしてきたか、どんな困難に直面したのか、キャリアを考えるにあたって何を大事にするべきかが魂のこもった文章で書かれています。

キャリア戦略の基本は、自らの強みを認識しそれを磨き上げること、という主張はわかりやすく、かつ強みのカテゴリーとして、考えることが得意なThinkingの人、人間関係の構築力が高いCommunicationの人、変化を主導することが得意なLeadershipの人の3種類にわけられる、という説明は世の就活生に広く参考にしていただきたい。ちなみに私は極端なThinkingタイプですが、わりとCommunicationもいけるので、とにかく面白いことを知り考えることを磨き上げ、そしてその知識や考えをわかりやすく伝えることで社会に貢献したい、というのが私のコアコンピタンスになっています。

また人はどういうときに一番しんどくなるのか、それは自己評価が低くなった時だ、とP&G米国本社赴任時を振り返るチャプターは数年間社会人を経験した人には大いに刺さると思います。

キャリアに悩んでいる人、そして就活生にぜひ読んでほしい本です。

苦しかったときの話をしようか

苦しかったときの話をしようか

 

 

失敗から学ぶための本

名将野村監督は座右の銘として「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を掲げました。コンサルティングという仕事をしていると、成功事例やベストプラクティス事例を求めるクライアントは非常に多いのですが、成功した理由は多岐にわたり自分に応用するのが非常に難しいという側面があります。

対して失敗した理由はどうでしょうか。これをやったら確実に失敗する、という落とし穴を認識し、それを避けることはむやみに成功事例を分析するより成功の確率を高められるかもしれません。失敗から学びたい、そう思ったときに手に取りたい本を紹介します。

なぜ、間違えたのか?

タイトルの通り、人間はなぜ間違えてしまうのか、その典型的な事例とメカニズムを心理学的側面を中心に解説している本です。

  • なぜ自分だけはうまくいくと思ってしまうのか
  • なぜ自分の力を過信してしまうのか
  • なぜ起こったことに対してあれは必然だったと思い込むのか

など身近なあるある事例をもとにどのような思考メカニズムが作用し、我々を合理的でない判断へと導いているのかを示していきます。軽妙な語り口と相まって非常に読みやすく、楽しめる一冊になっています。

なぜ、間違えたのか?

なぜ、間違えたのか?

 

  

失敗の科学

航空機事故や医療ミス、採用ミスなど世の中で発生する失敗を取り上げ、その原因を究明した一冊。

特に印象に残っているのは、韓国の航空会社において、副操縦士が機長に対して過剰な謙遜表現を使用していたため、機長が副操縦士の進言を重大なものと認識せず、結果大惨事につながってしまった、という事例。日本企業においても誤りに対して強く指摘しにくいカルチャーがあるかと思います。航空会社では、使用言語をすべて英語にすることによってTalk Straightを実現するという手段に出ましたが、日本企業においてもTalk Straightを推進する工夫は必要でしょう。

他にも採用担当者は自らが採用した人物のパフォーマンスは自らの評価に対して影響せず、採用の成否のフィードバックもほとんど受けないから、まったく採用の精度が向上しない、などなかなか痺れる指摘を繰り返しており、非常に刺激的な一冊になっています。

 

 

巨大倒産 - 「絶対潰れない会社」を潰した社長たち

インパクト抜群のタイトルで思わず手に取りましたが、取り上げられている企業をいくつかピックアップすると

  • タカタ - 3代目が世界シェア2位企業を潰した
  • ミサワホーム - 社長暴走でトヨタに乗っ取られる
  • そごう - 日本一の百貨店王の栄光と没落
  • セゾングループ - 時代をつくり自戒した感性経営
  • シャープ - エセ同族経営が招いた天国と地獄

など書きたい放題です。笑

ただこれだけの大企業が没落していった過程を読んでいくと、似たような要因があることに気が付きます。個人的に特に感じたのは、過去の成功事例に固執しすぎて未来への判断を誤る、といった点です。

普段接しているクライアントは大企業が多く、どの企業も大きな成功経験を有しています。しかし、シャープのような企業ですら経営に行き詰まるこの時代、コンサルタントとして成功事例に固執しすぎて行き詰る企業を変えるような仕事をしなくてはと、この本を読んで決意を新たにさせてもらいました。

巨大倒産 ―「絶対潰れない会社」を潰した社長たち

巨大倒産 ―「絶対潰れない会社」を潰した社長たち

  • 作者:有森 隆
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

経済学者たちの日米開戦

日本にとって忘れることのできない”失敗”に太平洋戦争があります。太平洋戦争の失敗の論点は、そもそもなぜ日本はアメリカという大国を相手に戦争を始めるという意思決定をしてしまったのか、という上層部の論点と、なぜ始めてしまった個別の戦いで敗北したのか、という現場レベルの論点の2つがあるでしょう。

この本は、なぜ戦争開始という意思決定をしてしまったのかという上層部の問いに焦点を当て、戦争開始に向けて各国の軍事力や開戦した場合のシナリオを分析した秋丸機関の報告書をもとに戦争に向かっていった意思決定のプロセスを明らかにします。

読んで強く認識したのは、戦争万歳!のような理解不能な論理によって戦争へと突き進んだわけではなく、極めて真っ当な思考を積み重ねたうえで、戦争という博打を打つしかなくなっていったのだという点です。

このまま何もしなければ石油の輸入もできなくなり、100%日本は没落する。ならばわずかな可能性に賭けてでも没落しない光の道を探すしかない。そこに向けて希望的観測を積み重ねながら開戦からの短期決着に光明を見出していったという苦しい意思決定プロセスです。

そしてこの苦しい意思決定プロセスは、官僚的な組織構造を持つ大企業でもしばしば目にするものではないかと感じました。日本は開戦を防げませんでした。ではこれからの日本、そして企業ではどうでしょうか。過去から教訓を得るためにもまずは知ることが大切ではないかと思います。

 

失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究

この本は、始めてしまった太平洋戦争において個別の戦いでなぜ敗北したのか、という現場レベルの論点に焦点を当てています。

ミッドウェー海戦やレイテ島での戦い、ガダルカナル島での戦いなど、戦争の行方を左右することとなった主要な戦いを取り上げており、正しく歴史を知るという意味でも価値がある内容ですが、それ以上に第2章以降で指摘される敗戦の原因からは本当に豊富な示唆が得られます。

陸軍と海軍という相互協力しない過度な縦割り組織、日露戦争では海戦での勝利が戦争の勝利につながったという過去の成功事例に固執し空軍の重要性を甘く見た失敗、もたらした結果ではなく、そこに至るプロセスや組織の人間関係に配慮しすぎた人事評価、戦略の不足を現場の優秀さと精神力でカバー、など指摘される失敗の本質は怖いほど今の大企業にも通じます。

日本最大の失敗から、我々も個人レベルで学び、教訓としていきたいですね。

 

組織について学ぶ本

イノベーションのジレンマ

優れた大企業がなぜベンチャーに負けるのかを解き明かした名作です。主要メッセージである、大企業は無能だから敗れるのではなく、正しく優秀に既存ビジネスプロセスを回すからこそ、イノベーションを起こすことができずに負けてしまうという主張は、今を持って重要性を増しています。

ベンチャーに負けないよう大企業でイノベーションを起こすには、既存組織から分離された新規事業創出組織をつくるべき、という本書後半の主張は、多くの大企業に影響を与えたことでしょう。イノベーションと組織、コンサルタントとしては極めて関わりを持つことが多いテーマになるかと思いますので、 是非読みましょう。

両利きの経営

イノベーションのジレンマの続編というべき内容の1冊。イノベーションのジレンマでは、既存組織で新規事業を立ち上げようとすると失敗しやすいということが説明されました。では、大企業はどうしたらいいのか。その答えとして提唱されているのが両利きの経営です。

新規領域の「探索」を担う機能とその探索を通じて試したものからうまくいきそうなものを絞り込む「深化」、この2つの機能を同時に回していくことがイノベーション創出に不可欠だ、という主張なのですが、本書ではかなりの数の事例をとりあげて両利きの経営を具体的に説明しているため、パッと聞いた感じだと腹落ちしにくいコンセプトではありますが、これらの事例が納得感を醸成してくれます。

新規事業支援、なんてしているコンサルタントはみんな読みましょう。オススメです。

 

THE MODEL

SaaSサブスクリプションインサイドセールス、カスタマーサクセス。
これらの言葉を聞いたことあるけれどそれ以上の知識は持ち合わせていない、という人にぴったりな一冊。著者はこの手の分野の企業ではNo1であるセールスフォースドットコムの元日本法人の元専務執行役員

SaaSやサブスクは売り切り型でなく、最初に購入してもらってからどれだけ継続的に利用してもらえるか、そこからアップセルとクロスセルをどれだけ狙えるかという点が勝負になるわけですが、そのための営業組織が実にロジカルかつ実践的に書かれています。

営業の案件フェーズ管理はどのように行うべきか、そしてなぜインサイドセールスが必要なのか。カスタマーサクセスは専門チームとして立ち上げるべきなのか。それほど重要なのか。そういった営業組織がSaaS事態においては最適なのか、非常に多くの示唆を得られます。

 

教養を高めるための本

方法序説

いきなり面食らうでしょう?デカルト方法序説、聞いたことはあっても読んだことのある人はどのくらいいますか?笑

1637年発行の世界最古のロジカルシンキング本です。デカルトはこの中で当時の社会最大の論点「神は存在するのか」をロジカルに「我思う、ゆえに我あり」の自己証明からステップバイステップで証明しようとしています。

ロジカルに考えるとはこうだ、こうやって堅い大地の上に積み上げればロジックは崩れないのだ、と緻密に頑張るデカルトには敬意を表します。ただ、このなかで体温を生み出す器官はどこにあるのかも証明しようとしているのですが、結論が間違っていると思います。笑

これをお薦めする最大の理由は、「本文100ページ程度で、1~2時間もあれば読み終わる」からです。あなたも2時間で教養人になろうじゃありませんか。

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

  • 作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/07/16
  • メディア: 文庫
 

サピエンス全史

こんなにも面白い本にはなかなか巡り合えない、そう思うような一冊です。
(私は進化生物学がとても好きで、この類の本をよく読みますが圧倒的に知的好奇心が喜んだのはこの本です)

我々人類はどんな旅をしてきたのか、進化生物学、歴史学文化人類学、経済学といった知識を総動員して本書を書きあげた著者にまず尊敬の念がとまりません。

サピエンスの旅路には、3つの重要な革命があったといいます。7万年前の認知革命、1.2万年前の農業革命、500年前の科学革命。まさに我々はいま科学革命の真ん中にいるといってもいいのでしょうが、ここまで俯瞰の目を持って歴史を眺められる本は稀です。

生物学、歴史的な話だけでなく、例えば「企業の利益追求は社会を良くするのか?」といった経済に関する考察も下巻に取り上げられており、まさに知の総合格闘技です。

 

絶滅の人類史

サピエンス全史にも記載があったと思いますが、進化生物学上の発見にはいくつか信じがたいようなファクトが見つかっています。例えば

などがあります。なお、それまで野蛮人として描かれがちだったネアンデルタール人が、どうやら白人の遺伝子にはネアンデルタール人の遺伝子が混じっているらしい、とわかってきたあたりで、綺麗なネアンデルタール人へと絵柄が変わったらしいという噂があります。笑

ホモサピエンスの歩んできた旅路には、近くを歩んでいた類人猿の仲間たちがいたわけですが、なぜいなくなってしまったのでしょうか。コンパクトな本でありつつ、壮大な旅に連れて行ってもらえる良書です。

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

2019年上半期、個人的Top3には入る本です。 哲学で修士を取り、BCGで働いていた著者による一冊。哲学のコンセプトを知っているだけで、どれだけ身の回りの事象を説明できることか、気づかせてくれます。そもそもコンセプトを知らないと身の回りの事象に気が付かないんですね。

例えば、人事報酬制度。著者は、M.ウェーバーカルヴァンが唱えた「予定説」のコンセプトを持って、努力⇒結果⇒報酬、を前提とした一般的な評価制度は必ずしもベストではないのでは、という仮説を説明しています。

あなた方は選ばれた人間だ。高報酬を約束する。あとは選民たるその証を示せ。

我々は選ばれた人間であなたたちとは違う。この程度のことは必ずできる。

こういった予定説的な人事設計は、意外と機能するんじゃないの?という仮説なんですが目から鱗とはこのことですね、面白い。総合ファームにおける戦略コンサル部門なんてまさにこの選民思想で・・・っと。誰か来たようですのでこの辺で。

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

  • 作者: 山口周
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/18
  • メディア: 単行本
 

 

ブラック・スワン - 不確実性とリスクの本質

リスクと不確実性の違いを説明できるでしょうか?
リスクは過去のデータなどを用いて将来起こることが予測されているもの、不確実性は何が起こるかさえわからないもの、と定義されます。つまりリスクは発生確率を予想し対策を講じられるけれど、不確実性はそれが発生するまでそんなことが起こるなんて考えることさえ難しかった、黒い白鳥がいるなんて想像だにしなかったという事象のため、予測して対策するという手法での対応が困難です。

そしてその予測できないが、一度現れると世界をひっくり返すほどの影響を持つ事象のことを著者は「ブラックスワン」と名付けます。この本で徹底的に伝えられるメッセージは、予測はできないよ、という点であり、ブラックスワンへの対策として予測精度を上げるぞ、という方向に走るのは筋が悪いですよ、という示唆が導かれています。

ブラックスワンのようにふわっとしていた概念に名前をつけて思考を深め、世界中に広く啓蒙する、タレブ氏は現代で最高峰のコンセプトメーカーだと私はこの本でファンになりました。

脆弱性 - 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

ブラックスワンにて、予測できないが、一度現れると世界をひっくり返すほどの影響を持つ事象の存在を明らかにし、かつブラックスワンへの対策として予測精度をあげることで対処しようとするのは筋が悪いと強烈なメッセージをはなったタレブ氏の新作。

じゃあ、ブラックスワンにはどう対応したらいいの?という問いに対しての答えが書かれた1作になります。

ここで登場するのが、「反脆弱性」という新たなコンセプトです。脆いの対義語は頑健であることではない。衝撃をしなやかに受け止め糧とする、Anti Fragile/反脆弱性である。という主張にも痺れるものがあります。

「衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。そして冒険、リスク、不確実性を愛する。こういう現象はちまたにあふれているというのに、『脆い』のちょうど逆に当たる単語はない。本書ではそれを『反脆(はんもろ)い』または『反脆弱』(antifragile)と形容しよう」

本書では、この反脆弱性をビジネスモデルにも組織構造にも個人のキャリアプランにも取り入れていこうよ、あなたの人生を考える上での指標の1つに加えていこうよ、と提言がされています。

コロナが世界中に蔓延する、これもブラックスワンだったと私は思います。大きな変化やストレスが起こった時に会社や自分が潰れないようにするにはどうしたらいいか、非常に示唆に富む1冊だと思います。

シン・ニホン

イシューからはじめよ、の著者である天才安宅さんが今の日本が抱える課題と将来どうするべきかを考え抜いたという一冊。

前半は来るAI時代を意識しながら、日本という国の現状をファクトを丁寧に積み重ねながら解明していきます。このようなデータやファクトに基づいたストーリー設計はまさにコンサルタントが日々行っている仕事そのものであり、この本のストーリー展開のロジカルさを含めて、安宅さんの優秀さが改めて伝わってきます。内容も非常に示唆に富んでおり、学生の方でもしこの本を手に取った方がいたならば、論文やエッセイはまさにこのように書くべきというお手本にしてほしい。

後半は日本の現状をどう打開するかという提言が書かれており、個人的には特に日本の大学がどう競争力を獲得していくか、という提言には大いに賛同しました。産官学のフロンティアで活躍されているだけあって、提言の内容も一読し、実現に向けたアクションを考える価値があります。