戦略コンサルでクビにならないために心掛けた10のこと
多くの戦略コンサルファームの共通点に、数年以内に昇進できないとクビになる、というものがあります。リアルに「You are Fire」と面と向かって言われることは稀かもしれませんが、評価の悪い人はプロジェクトアサインのお声がかからなくなる、といったことはよくある光景です。
新卒で入社したとき、せめて最初の昇進のハードルは超えたい、クビにはなりたくないと思っていました。新たにコンサルファームに入られる方もそこを最初のマイルストンにおいていることが多いのではないでしょうか。
今回は、私が入社以来、上司に怒られ怒られ蓄積された、これだけは心がけておくべき10のこと、を自身への反省を兼ねてまとめましたので参考にしていただければ幸いです。
この本も参考になります。
今回の記事の目次はこちら。
- 会議は録音して聞き込め
- クライアントのぼそっとした一言を聞き逃すな
- MTG中に何を発言するか考えているのは遅い
- MTG後、すぐにラップアップしよう
- ストーリーのサマリを書こう
- 要望には一回、従順に従おう
- 言われてから追加するのではなく、言われる前に必要か相談しよう
- 三十秒レビューをもらおう
- 指摘はその場で可能な限り直す。PPTなら指摘を該当ページにメモしろ
- 「面白い」の目線を経営者と合わせよう
1. 会議は録音して聞き込め
入社して最初に感じたハードル、それは
「議論展開が早すぎて何言ってんのかついていけない」
特に自分がアサインされるタイミングでプロジェクト開始から既に半年ほど経っている、なんてケースでは今までの背景知識あっての議論のため、ますますついていけません。謎の社内用語や謎の「3月に山田さんがつくったあの資料」など。
そんな状況でのキャッチアップにおいて一番効率的なのは今のMTGを徹底的に聞きこむではないかと思っています。MTGの中でわからなかった単語、議論、関係者の名前などをとにかく洗い出し、周りに聞いたり過去資料を読みこむ。
そのためにも入社初期、プロジェクトアサイン初期はMTGを録音して聞きこむことが有効だと思っています。段々と議論のスピードにも慣れてくるので。
iPhoneの録音がおすすめです。
2.クライアントのぼそっとした一言を聞き逃すな
クライアントとのMTG中、ぼそっとクライアントが漏らす一言があります。
「有望業界はXXか。うちってXX業界のお客さん多かったかなあ」、みたいなイメージです。こういう一言、結構大事でしてその一言に寄り添うことができればクライアントからの信頼感が増します。
「前回のMTGでは、市場規模と成長率から有望業界を絞りました。今回は御社と接点のある企業数という軸も加えて分析してみましたが、XX業界は御社と接点のある顧客も多く、その意味でも有望と言えます」というひと手間が刺さったりします。
頭の良さだけでなくこういった寄り添い力も大事です。特にコンサル、なんて情が薄そうなイメージのある我々だからこそより大事にすべきことかもしれません。
3.MTG中に何を発言するか考えているのは遅い
コンサルになると「会議中に発言しないなら、お前は無価値だ」と散々教育されるでしょう。しかし会議中にぽんぽんと鋭い質問を思いついて発言していくなんて、天才の技です。ホリエモンとかその才能があります。
私のような凡人は、MTG中に天賦の才が開花することを期待するのではなく、あらかじめMTG中に論点になりそうなこと、その落としどころ、そこにもっていくために納得させないといけないポイント、想定される質問と答え、あたりを考えておきます。
自分が仕切るMTGを小さな討議でもいいのでこなすようになると、これらをかなり本気で考えるようになります。そうなるとMTG中にどんどん発言するようになります。
MTG中に発言できないのは、MTG中の問題ではなく、MTG前の問題です。
4. MTG後、すぐにラップアップしよう
どんなに会議を聞き込んだつもりでも会議の後にマネージャーと話していると「え、クライアントそんなこと言ってました?」や「あれ、それってそんな意味でしたか」という認識の齟齬が生じがちです。
MTGが終わった後、10分でもいいのでチームでMTGの振り返りの打ち合わせをしましょう。今回解消できた論点はどこで、解消できなかった論点、新しく出てきた論点は何か。最低限、ここまでは合意しておきたいところです。
ここがずれていると、MTG後の作業が無駄になるリスクが高まります。MTG直後にやってしまうのが楽で合理的なのでお薦めです。
5. ストーリーのサマリを書こう
ラップアップで、今回解消できた論点と残論点を握れたとしましょう。次は、残論点に対してどのような方針でいくのかを考える必要があります。
残論点、それを解くために答えるべきサブ論点、サブ論点に対する答えの仮説、その仮説の正しさを示すために必要なファクト、そのファクトをどう集めるか。これらを設計して役割を振るのがマネージャーなわけですが、アソシエイトやアナリストがやろうとして怒られることはありません。
MTG直後は、若手スタッフ的には比較的時間にゆとりがある場合が多いです。
「サマリ書いてみるので夕方のMTGでそれを叩きに方針討議させてください。」
この発言が出てくるならイケてる若手感が半端ありません。
私ももっとサマリ書き、頑張ります。
6.要望には一回従順に従おう
クライアントMTGや社内のMTGを経ると、あれを調べてほしい、このコンテンツがほしい、といったリクエストが出てきます。いや、それを調べても無駄なんじゃないか、もっとこっちを調べたほうがいいんじゃないか、と感じることもあるかもしれません。
特にクライアントからのリクエストの場合ですが、私のわずかな経験からはそのリクエストに答えてもあんまり意味ない・・と思っても一度従順に応えたほうがよいと結論が出ています。
以前、パートナーが「コーヒーが飲みてえと言ってるやつに、絶対紅茶の方が美味しいので紅茶持ってきました、て言っても怒られるだけなんだよ。一度まずくてもとにかくコーヒーをつくって飲ませる、そのあとに紅茶のが美味しいと思うんですが、ってもっていかないと人は納得しない」と言っており、これは本当にその通りだと思います。
まずいコーヒーつくるのが美味しい紅茶を飲ませる最初の工程です。
7.言われてから追加するのではなく、言われる前に必要か相談しよう
A社の事例に加えて、B社の事例も入れておいた方がいいような気がするけれど、リサーチ時間かかりそうだし、出来ればやらずにこっちのパートに時間を割きたい・・。いったんB社は入れずにレビューいくか。
このようなケース、しばしばあると思うのですが、こういうときは「B社の事例も入れてよ」と上司から言われるより、「B社もできれば入れたいんですが、こちらのパートにリソースを割きたいと思っていて、優先順位相談させてください」と先手を打った方が絶対にいい流れになります。「B社も入れてよ」と言われるとそのあと、「できれば入れたいんですが、こっちのパートに・・」などと言っても言い訳がましくなります。
とにかく先手・先手で議論において劣位になるのを避けることが重要です。
8.三十秒レビューをもらおう
マネージャーから指示をもらって動く場合、数時間後か半日後か、どこかのタイミングでレビューをもらうことが多いかと思います。そのレビューできちんとマネージャーの期待値を超えるものを出せれば、どんどん評価が上がっていきます。
以前中途で入ってこられた先輩にレビューまでとにかく一生懸命仕事をするも、レビューではマネージャーに「ちょっと違う」、「想定とずれている」と言われがちな人がいました。その人は、レビューまでマネージャーとの会話はほぼなく、本番1本勝負でした。
半日後にレビューポイントがあるからと言って、それまで相談していけないと決まったわけではありません。30秒でいいんです。何かのついでに「ここなんですが、こんな感じで資料作ろうと思ってるんですけど、認識合ってますかね」とちょいちょいマネージャーの30秒レビューを混ぜることで大滑りをなくせます。
半日後のレビューで、どちらがいいアウトプットを出せているか。成果主義とはプロセスではなく、成果で評価されます。マネージャーに頼らずにできたから偉いね、とはなりません。徹底的にうまく上司をつかいましょう。
9.指摘はその場で可能な限り直す。PPTなら指摘を該当ページにメモしろ
レビューでは、ここをこうしてほしい、ああしてほしいと次々と指摘が入ります。チマチマとノートにメモを取っていっては追い付きません。
PPTに対するレビューであれば、ちょっとした指摘ならその場で直すのが吉です。時間のかかる修正は、指摘を受けたスライドに目立つ色で直接メモをとりましょう。
あそこの文言変えといてって言ったのに変わってないじゃん。
こういう大したことないような修正でも指摘したことが直っていないというのは、めちゃくちゃ噛みつかれます。特にクライアントにやたら面倒くさいお客さんがいた場合(コンサル嫌いのお局さんみたいな人が一番やっかいです)、鬼の首をとったかのように嬉々として指摘を始めます。
そんな本質的でないことで評価を下げないためにも、修正漏れがないようにスライド自体にどでかく、黄色塗りつぶしに赤字とかでメモを取るのが大事です。
10.「面白い」の目線を経営者と合わせよう
「この会社面白いんですよ」「へー、どこが面白いの」「顔認証でこんなことやあんなことまでやってるんですよ」「んー、50点」
昔こんな会話を仲の良い上司とした記憶があります。経営者は、「その会社はどうやって儲けているのか」の1点に面白みを感じます。すごい技術をつかっていることに面白みを感じるのではなく、それをどうつかって金を稼ぎ出しているのかに面白みを感じます。似て非なるものです。
新規事業、コストカット、社員の育成などなど、経営者はどこにその目を向けているのか、その中でどんな話が面白いと思ってもらえるのか。「面白い」のレベルを経営者に合わせることが戦略コンサルとして必要不可欠なことでしょう。
普段から経営者は何に関心を持っているのか、日経ビジネスや中期経営計画でもいいのでアンテナを張っておくことが大事かと思います。
以上、10の心掛けをコンサルで働かれる方に向けて語ってみました。コンサルでの仕事を想定して書きましたが、コンサルを初め、世の中の多くのビジネスパーソンにとって参考になるところが少しでもあれば幸いです。