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男もすなるブログといふものを元外資コンサルもしてみん。なんやかんやで今は起業した会社の経営者。

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発展途上国を正しくとらえるためのおすすめ本

発展途上国を正しくとらえるための本

例えばアフリカ。アフリカ大陸の北端と南端ってどれだけ離れているか知っていますか?

日本 ースウェーデンの距離です。(約8000km)

アフリカ、なんてラベルはデカすぎる、途上国なんて大雑把すぎる。まずは事実に基づいて、認識の歪みを直すべくファクトフルネスから。

 

なお他のおススメ本記事は以下からどうぞ。


 

FACTFULNESS(ファクトフルネス)

2019年上半期個人的ランキングTop3には入ります。 

世界の貧困層はどの程度減ったのか?

初等教育を受けられる女性の割合は?

ワクチンを受けられる子供の割合は?

ヤフーニュースのコメント欄を見ると顕著なんですが、「最近ほんとに凄惨な事件ばかりでどんどん日本の治安が悪くなっている気がします」というコメントで溢れています。日本の殺人事件の件数は、ここ50年で半減しているんですがね。

なぜ世の中が悪くなっているような錯覚に陥るのでしょうか。上記のような質問を通じてあなたにも世の中悪く見えるバイアスがかかっていることを示した後、なぜそのようなバイアスがかかるのか原因を説明し、そこへの対策を論じています。

世界の常識を学べるだけでも損はないのに、バイアスの原因と対策にまで踏み込んだ稀に見る良書です。 

 

貧困の終焉

途上国の発展に向けて何をするべきか、という問いに対して、大きな主張が2つありました。1つは本書のジェフリーサックスに代表される、積極的に途上国に援助を行う必要があるという主張です。貧困の罠、などともいいますが、簡単に言えば貧困から抜け出すためには教育費用や設備投資などの初期投資が必要であり、それを個人の自助努力によって捻出させるのはなかなか厳しい。したがって初期投資を先進国の支援によって担うことで貧困の底に梯子をかけ、彼らを引っ張り上げる必要がある。そうすれば途上国の貧困の解決に向けて大きな貢献ができるはずだ、という論旨になります。
実際、この主張は影響力があり、この論理が国際機関による途上国への援助を支える大きな論拠となりました。
では、そのような援助には実際に効果が認められたのでしょうか。サックスは大いに効果が認められたと主張しているのは本書を読めばおわかりいただけるところです。それに対して、援助はむしろ悪影響だという主張を展開したのが次で紹介するイースタリーやダンビザ・モヨになります。
貧困の終焉

貧困の終焉

 

 

傲慢な援助 / 援助じゃアフリカは発展しない

多額の援助は途上国の発展にとって有益であったのでしょうか。
イースタリーやダンビザ・モヨは、多額の援助は政府の腐敗を招き、真に援助を必要とする人のもとには雀の涙ほども届くかどうかといった状態で、ほとんど効果はない。むしろ腐敗を加速するという点で有害であるくらいだ、という主張を展開します。
実際のところ、統計学的には援助が途上国の成長に有意に好影響を与えているということはアカデミアで広く合意されるほどには明確に示されておらず、マクロ的な側面で援助の効果を測定しようとすることの限界が明らかにされました。
その結果、援助の効果をもう少しミクロレベルで検証しよう、という動きが顕在化します。その代表者が2019年にノーベル経済学賞を受賞したバナジー、デュフロなのです。(貧乏人の経済学を読みましょう!) 
傲慢な援助

傲慢な援助

 
援助じゃアフリカは発展しない

援助じゃアフリカは発展しない

 

 

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

6~7年前にはなってしまいましたが、開発経済学の分野に大旋風を巻き起こした本です。ファクトフルネスで、意外と途上国の貧困って削減されてたのか。でもどうやって?と思ったあなたにはこちらの本を。

途上国の貧困層は、決して頭が悪いから貧困なのではなく、彼らはおかれた環境の中で極めて合理的に・最適な行動をとっているのだと解き明かしていきます。

そしてその行動原理を理解した上で、対策を行うことが重要なのであると。マイクロファイナンスも教育も衛生対策も。

もう1つこの本で画期的だったのは、ランダム化対照実験という手法を用いて、施策の効果を検証している点です。施策を行った地域と行っていない地域をしっかり比較する、まあ簡単に言えばこれだけなんですが、統計学的な手法として確立し、実際の実証実験にまでガンガン用いているのは素晴らしいです。

専門的な内容を平易な言語で解説した、21世紀に名を残す名書だと思います。

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

 

 

ネクストマーケットー「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略

貧困削減、などと手を差し伸べる対象と考えられがちな途上国ですが、既にそこには大きなビジネスチャンスが顕在化しています。

このネクストマーケットの著者C.K プラハラートは、コアコンピタンスを提唱した経営学の巨人の1人として知られています。その経営学者がいま最も注目しているのが、途上国のマーケットです。

特にBottom of the Pyramid、ピラミッドの底辺(途上国の貧困層)は所得は少ないが圧倒的な人数を抱えており、実はマーケットサイズとしてかなり大きいのではないか、そこを攻略するビジネスモデルは既に機能するのではないか、という仮説を主張しています。

例えばP&Gは、インド市場でボトル型ではなく、1回使い切りのシャンプーを販売し、インドのBOP層の90%にまで浸透させたともいわれています。

これから所得が増え、Bottomとも言えなくなることが間違いないマーケットで、どれだけ早くから存在感を示せるのか、そのためには先進国とは全く異なる消費者の行動様式を理解した上での製品開発・マーケティングが必要なのだとしみじみします。

途上国の繁栄に必要なのは、援助ではなく、まっとうなビジネスなんだと感じられる点でもお薦めしたい一冊。