現役戦略コンサルタントが語るブログ

元コンサルがすなるブログといふもの

男もすなるブログといふものを元外資コンサルもしてみん。なんやかんやで今は起業した会社の経営者。

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「消費」以外のお金の使い方を知ると人生の幅が広がる話

お金持ちになれるのならなりたい。

ではお金持ちになったら何をしようか。

高級な家に住み、ブランド物を身につけ、高いレストランでごはんを食べる。

 

お金を消費して得られるモノやサービスはたくさんあって、それはそれで楽しいけれど、そこから得られる幸福感は慣れという魔物によって2回目以降如実に下がっていく。

 

生きるために必要なお金は絶対にあったほうがいいけれど、年収と幸福感の相関関係は、年収800万円くらいで頭打ちだとも言う。

 

お金は良い物やサービスを買う、という以外に素敵な使い方はないのだろうか。

私はお金には、消費以外に2つの使い方があると思っているので、自分の考えの整理がてら、ここに書いてみる。

 

1つは、価値を買うのではなく、価値を創り出す活動にお金を使うこと。投資と言っても良いのだけれど、ここで言いたいのは株を買ってお金を増やそう、みたいなこととはちょっと違う。

 

これは特に自分で会社を起こしてから強く感じるようになったのだけれど、自分のアイデアを形にする活動にお金を投じる。そういうお金の使い方を覚えると、人生、末長く楽しめる。

消費で得られる喜びは一瞬のピークを残して過ぎ去るけれど、自分にしか生み出せない価値を育てていく活動は、ロングジャーニーで、10年単位で楽しめる。

 

私は消費を中心とした活動のみで人生を楽しむには、人生はちょっと長すぎるのではないかと思っている。自分にしか生み出せない価値を世の中に創造する。消費ではなく、世の中に供給する活動があってこそ、社会参加の実感や生きる意味が得られて、充実感が得られるのだと思う。

そしてこの活動はうまくいくと、お金を使ったはずが、なぜか増えて戻ってくることが多い。

 

私はいま、「起業」を「自分にしか生み出せない価値を世の中に創り出す活動」の1つとして例にあげたけれど、結局のところ、一番尊敬に値する活動は、子育てではないかとも思う。

 

自分がいなかったら生まれなかったもの。

それを育み、世の中に送り出していく。

こういった創造的な営みにお金を使い、楽しむことを覚えると、人生はちょっと短すぎるのかもしれない。

 

もう1つのお金の使い方。

それはただただ、持っているだけで人生の選択肢が広がるという、お守り効果。

 

お金によって制限される人生の選択肢は本当に多い。それなりに裕福な家庭だと、気づかないまま大人になることも多いけれど、スポーツを続けられるか、大学に行けるか、どこに就職するか、結婚するか、子供を持つか、子供にどんな環境を与えられるか。

 

また起業の話で申し訳ないが、誘われて起業するときも、コンサル時代に謎に溜め込んだお金があったから、「まあ1年くらい役員報酬なくても問題ないし、楽しそうだしいっちょやるか」と腰を上げたという側面もあった。

 

お金を持っているだけで、シンプルに人生でとりうるリスク許容度が上がる。

お金によってチャレンジできる権利すら狭まる、無くなるというのは、それは正しい社会なのか、という論点はあるけれど、現実問題、いまはそうなっていると思う。

 

お金は持っているだけで、諦めなくていい選択肢が増える。それはとても偉大なことだと思う。

 

(察しの良い読者はお気づきと思うが、2つ目の価値は、「創造的活動にお金を使う」という話に対して、どんな「創造的活動」が選択可能か、そして、「その創造的活動にどんな投資を行えるか」というサブ論点的な構造になっており、同じ粒度の話になってはいない。ちょっとキモい論理構造になったなと書きながら思ったが、わかりやすさとメッセージ性優先で、ここは創造的スルー(?)をすることとした)

 

話をまとめると、

・お金を消費してモノやサービスを楽しむだけだと、長い人生、飽きがきてしまうと思う

・消費活動ではなく、創造的活動、自分にしか生み出せない価値を育て、世に送り出す、そんな活動のためにお金を使うことを覚えると、長く楽しめる

・それは例えば起業だったり、子育てだったり…etc

・どんな創造的活動にチャレンジするか、という選択肢の幅を持ち、適切なタイミングでリスクを取るためにも、お守りのようにお金は持っておくとよい

 

価値を消費するためでなく、価値を創り出すためにお金を使えるようになると、人生はずっと楽しくなるのでは?という、そんなお話でした。

近況報告!

ブログを見ていただいているみなさん、随分とお久しぶりになりました。すみません。

 

最後に更新したのが2年ちょっと前ですので、いつのまにか時が経ちました。

この2年、いろいろありまして、新卒から勤めていたコンサルティング会社を退職したり、そのまま仲間とともに会社を立ち上げたり、会社を立ち上げた後は、うまくいかなかったり、ちょっとうまく行ったりと、バタバタと、けれどもなかなかに楽しくやっておりました。

人生で一番、青春したような気がします。

 

せっかくのブログなので、たまには更新して、有効活用していきたいなと思ってます。

果たして今は「コンサルのすなるブログ」なのか、という問いはありつつ。笑

いったん、「元コンサルのすなるブログ」くらいにしておきます。

 

1つ記事を公開しましたので、みなさん、気が向いたときに読んでいただけたら嬉しいです。

ではでは。

なぜコンサルは激務なのか

 なぜコンサルは激務なのか

先日、なぜコンサルは激務なのですか、という質問を頂きました。

その時は以下のように答えたのですが、もっとこう業界構造的な理由もあるなとこの後考えを巡らせまして、今回は構造的に激務になりがちな理由を書きたいと思います。

 

コンサルファーム間の競争の結果として激務は当然の合理的帰結

コンサルティングという仕事は、工場や機械をつかった活動ではなく、基本的に人が稼働することで価値を生み出す仕事です。仕事の量と質をあげるためには、人数を増やすか、人の稼働時間を高めるか、人の生産性を上げるか、いずれにしても人にまつわるファクターしかありません。

このなかでコンサルファーム間の競争について考えます。A社とB社がある案件を巡って競争していたとします。勝つためには、価格を下げるか、納期を短くするか、成果物のクオリティを高めるか、このあたりで勝負することになります。

A社とB社の人員の質に有意な差がなく、またA社が労働時間を厳格に守る企業だとした場合、B社は毎日の深夜労働をメンバーに強いることでA社の半分の期間で案件を遂行する、あるいはA社よりはるかにクオリティの高い成果物を仕上げることができ、A社に対して強い競争優位を築くことができます。

ホワイトA社に対しては、ブラック労働という戦略が非常に有効であるため、コンサル企業間で正しい競争作用が働けば働くほど、ナッシュ均衡としてはコンサルタントは限界まで働くという状態に帰着すると思うのです。

 

社内のコンサルタント間の競争の結果としても激務になりやすい

先ほどは企業間の競争という観点で考えましたが、次は社内の競争でも考えてみましょう。

コンサルファームに勤務するコンサルタントはある種の個人事業主に近い感覚を持っています。自分の働きが認められなければ、プロジェクトへアサインされなくなり、会社を出ていかなければならないため、コンサルタント間でも一定の競争が作用します。

自分が周りに比べて際立って優秀であることをアピールするためにあなたが採用する戦術は何でしょうか。

成果を得やすい戦術は、めちゃくちゃ長時間働くことです。仕事の質も量も大体は労働時間に比例します。毎日8時間労働しかしないコンサルタントに対して、毎日16時間あなたが働いたなら、かなり高い確率で8時間コンサルタントより高い評価を獲得できるでしょう。もし8時間以上労働するな!と言われても、こっそり働いて8時間で16時間分の素晴らしい仕事をしたことにしたくなるでしょう。

このように社内の競争においても、正しく競争が作用すればするほど、長時間労働をみんなが行うようになると考えられます。

 

長時間労働に対して企業が受けるデメリットの拡大

上記のような背景から、企業としても長時間労働してくれるスタッフがいると他社に対して競争優位が築けるし、スタッフも長時間労働を積極的に行ってくれるから、長いこと何ら長時間労働を改善しようというインセンティブが生じず、結果コンサルは激務というものがカルチャーとして定着したのではないかと思います。

ただ、最近はブラック企業というイメージが採用コストを大幅に上昇させています。あそこはブラックらしいと有名になり、誰も会社に来てくれなくなった場合、コンサルファームは売上の拡大を図れません。単価はそう簡単に2倍、3倍になるものではないですので、人員を2倍にして受ける案件を2倍にしたほうが売上は簡単に拡大します。人の流出のほうが多くなったら、それに伴って売上は縮小します。人が取りにくくなることはコンサルファームにとっては致命的な痛手です。

ワークライフバランスブラック企業への問題意識の高まりとともに採用コストが上昇し、コンサルファームもブラック企業のイメージを払拭するべく意識を持ち始めたというのが現在の立ち位置かと思います。

 

コンサルファームのホワイト化は進むのか

ブラック企業イメージによる採用コスト上昇を解決すべく、多くのコンサルファームでは労働時間の改善を進めています。しかし、ある程度ホワイト企業であるという見え方をされるようになり、また人が採用できるようになれば、それ以上はホワイト化を推し進めるインセンティブはありません。

私がCEOなら、労働時間改善改革をぶち上げ、大々的に社外に発信し、採用コストが下がったところでなんとなくそれ以上のパワーはかけずに有耶無耶にします。

またコンサルタント間の競争の結果として激務になるというメカニズムに対してはメスが入れられていません。したがって、このままいけば、ある程度労働時間は改善するものの、コンサルタントが定時に帰るようなことはまず起きないと思います。これ以上に労働時間を減らすためには市場以外の力を借りるしかないでしょう。

 

本気で労働時間を是正するなら法的制裁以外にない

労働時間ルールを定めたところで、それを破ることで利益を総取りにできる場合、ルールを破るインセンティブは極めて強く、これを抑制するためには、ルールを破った者に対して制裁を行うと示す以外にはないと思っています。

ルールを破ることで他の競争相手を出し抜いて利益を得ることができるが、その結果として社会的に望ましくない状態が生じる、という構造は環境問題にも通じる構造かと思います。

例えば、ハーバード大学レベッカヘンダーソン教授が、環境問題に対して汚染を行う企業を止めることができるのは政府が法的制裁をとると明示的に脅しをかけられるときだ、という趣旨のことを述べているように(資本主義の再構築 p245)、この問題を本気で解決するためには政府による介入が必要不可欠でしょう。

あるいは・・、AIがコンサルタントの肩代わりをしたとき、パラダイムシフトが訪れるかもしれませんが。

またこの考えは、コンサルだけでなく、SEやアニメ制作など機械や工場ではなく、人が稼働することで何かを生み出すという職種全体にもいえるでしょう。機械や工場を扱う場合は、工場の稼働を最大化させることが重要で、人の稼働はそこまで重要な話になりません。人の稼働最大化がコアな競争力になっている職種はすべからく、激務になりやすい構造を持っているということは、理解しておいて損はないでしょう。

長時間労働について、政府が介入し制裁を行うほど重大な社会課題とみなさんは考えるでしょうか。ブラック企業の問題意識の高まりとともに労働市場からのプレッシャーでよい方向に動いてはいますが、それ以上の改善を強力に進めるべきでしょうか。

私はだいぶ長時間労働に慣れたこともあり、まあこういうWork Hardなとこがあってもそれはそれで・・、とブラックな考えによっていくところもありますが、持続可能な未来に向かって世界が本気で取り組む中では前時代的な考えなのかもしれません。優秀な人材の使い潰しや自殺という悲劇を繰り返すわけにはいきませんし。

みなさんはどう考えるでしょうか。

コンサルファームで守るべきスライドのお作法 ~絶対にこれだけはするな!~

2020年にTwitterで反響のあった不定期企画に「許せないシリーズ」がありました。Power Pointでスライドを作成するにあたって、それをやったらだめですよというタブーをつぶやいたシリーズだったのですが、100を超えるいいねがつくこともあり、かつだいぶタブーも溜まってきたので、ここでまとめて紹介し広く周知することで、コンサルファームにお勤めの皆さんの2021年のストレスを少しでも減少させようというそんな目的の記事になります。

 これを読んだ人のなかには、細かすぎるだろ、なんだこいつ、と思う人もいるかもしれないのですが、多くのファームでは以下で紹介するルールを守らないとひっそりと上司の眉間にしわが寄ることになると思うので、ぜひ参考にしてください。

 

 ボックスの長さ・位置・間隔は完璧に揃えてくれ

コンサルファームに入ると真っ先に、スライドを作成するときにはボックスは手動で移動させず、必ず左右上下揃え、間隔揃えのショートカットを利用して移動させろと言い聞かせられるかと思います。

やはりコンサルが作成する資料は、多額のコンサルフィーに見合った成果物としての美しさを備えているべきで、完璧に揃ったボックスには幾何学的な美しさが宿ります。

少しでもずれていると、美しい資料を作り続けてきた人にとっては極めて強い違和感を感じさせ、何となくいい加減な仕事をしているような印象すら与えかねません。ボックスの位置・間隔は徹底的に揃えましょう。

ちなみに、私はAlt H G Aのショートカット群を愛用してますが、手数が多いのでクイックアクセスツールバーにAlt 1など、自分の使いやすいショートカットで登録しておくとよいでしょう。 

 

ボックスの上にテキストボックスを重ねて文字を書くな

たまにやっちゃってる人がいるんですが、ボックスのうえにテキストボックスを重ねて文字を書くことは基本的にNGだと思ったほうがよいです。これをしてしまうと、間隔揃えをしようとしたときにテキストボックスも対象に入ってうまく揃わなくなるなど、各種資料のメンテナンス性を大きく下げる要因となります。

ちなみにデフォルトの図形ボックスだと謎の色がついている、といった非効率を感じることがあるかもしれませんが、ボックスを右クリックすると下から4番目に「既定の図形に設定」という項目があるので、そちらで使いやすいフォント・色・枠線をデフォルト設定すれば解決するでしょう。

 

テキストに合わせて自動調整するテキストボックスはつかうな

テキストボックスには文字を書いていくと、その文量に応じてボックス自体の長さが変わっていく、「テキストに合わせて図形サイズを調整」というフォーマットがあるんですが、これはつかわないでほしいです。

これを使うと何が起こるかというと、上記で説明したようにせっかく揃えたボックスの長さが文章を書き換えていたらずれていく、という事態が生じてしまいます。

メリットも特に感じておらず、デメリットだけじゃないかと思っているので、皆さんもテキストに合わせて図形サイズを調整するボックスの利用は控えましょう。

 

箇条書きをお手製の「・」ではじめるな

スライドを作成する際に、箇条書きで文章を書くことはよくあると思うのですが、その際にお手製の「・」をつかって文章をはじめるのはやめましょう。

この何がよくないかというと、文章が二行にわたって続いた場合、以下のように

・箇条書きで書いている途中で
文章が二行目に突入したときに文章の始まりが揃わない

のが本当にダサい!!!

最悪なのが、スペースを入れて1行目と2行目の始まりを力技で揃えているケースです。これは文章を他の人が修正しようとしたときにメンテナンス性が非常に悪いのと、そんな努力するくらいならなぜデフォルトの箇条書きをつかわないんだ・・、ということでイラっとします。

Alt H U 2かクイックツールバーにこのショートカットを登録するかで箇条書きのフォーマットを利用することを習慣づけましょう。

 

隠しボックスを絶対に残さないでくれ

スライドの枠外やボックスの後ろなどに消されずに残されたボックスが潜んでいることがあるんですが、これには細心の注意を払いましょう。

特に枠外にボックスが残っている場合は、表示される本体のスライドの位置が中心からずれます。何か違和感を感じたら変なところに消し忘れたボックスが残っていないかを確認しましょう。

 

フォントはMeiryo UIをつかえ、メイリオと混じらせるな

これは個人の趣味もあるんですが、Meiryo UIがいいですよね、やっぱり。Tweetでも大きな賛同を得ましたので、皆さんMeiryo UIにしましょう。

また数値や英語を記載するときに半角だったり、全角だったりとばらついている資料もしばしば見かけるのですが、統一感がなくダサいので気を付けましょう。

SDGsですからね、SDGsにはイラっとしますからね。 

 

文章途中で改行するときにEnterをつかうな、Shift + Enterをつかってくれ

文章の途中で改行したくなることがあったとします。その際、Enterを押して改行をしていないでしょうか。

これ、是非やめてほしいんです。改行するなといっているのではなく、Shift + Enterをつかってほしいのです。Shift + Enterは、文章の途中に改行するために存在しているコマンドでして、箇条書きでも箇条書きを続けたまま改行が可能です。

また、シンプルにEnterを押すと、一行目と二行目に微妙な隙間が生まれるケースが大半です。これは行間設定の影響なんですが、デフォルトの設定であれば新たな文章を始めたと認識されるEnterでは、一行目と二行目の行間が広くなります。

Shift + Enterならボックスの右端まで文字が詰まって改行が行われた自然な改行のときの行間と同じになります。このブログでいうと、こういうことです。

良い例(Shift + Enter)

1行目
2行目

悪い例(Enter)

1行目

2行目

めちゃくちゃ細かいんですが、気にするコンサルタントはかなり多いと思うので、皆さん遵守しましょう。 

 

文章の最後は、体言止めか用言止めか、どちらかに統一してくれ

箇条書き等で文章を書くときの文章の終え方には

海外進出することが重要である(用言止め)

海外進出することが重要(体言止め)

の二種類が存在します。

どちらがいいかは上司やクライアントの好みもあるので絶対解はないんですが、どちらかに統一することは最低限のマナーだと思っています。

文末に用言止め、体言止めの両方が混在していると、統一感がないように見えてダサくなります。

また、文末に「。」をつけるかつけないかもどちらかで統一するように注意しましょう。 

 

色に統一した意味性を持たせてくれ

まず、コンサルタントとしてスライドを作成するときには無駄にカラフルにしないことが原則だと思っています。それを踏まえての色使いですが、例えば、p1にメリットを赤いボックスに、デメリットを青いボックスに記載したとします。

そうしたら、良いことは赤で、悪いことは青で記載するように資料全体で統一しましょう。間違ってもp2でメリットを黄色いボックスで記載し始める、ということは辞めましょう。

 

ここで紹介したことは明日から即つかえるHow論ばかりですので、新人コンサルの方もコンサルでない方も学生の方もスライド作成の際に意識してもらい、将来受けるかもしれない上司からの小言を避けていただければと思います。それでは。

経済学を知りたくなった社会人におススメしたい本

経済学を知る本

大人になってからちょっと経済学を勉強したい、理解したいという人におススメしたい本を紹介。

経済学にはいくつかの大きな思想派閥が存在していますが、まず最初に簡単に私の理解を述べておきます。(*間違っていたらコメントなどで指摘してください!!)

①自由市場を愛する派

アダムスミスに始まり、20世紀前半はハイエク、20世紀後半ではミルトン・フリードマンがこの派閥の親玉といってよく、政治経済界も20世紀後半から2000年初期には自由主義が非常に勢いを持っていました(リバタリアンなどとも呼ばれます)。時代としては、レーガンサッチャー・中曽根といった指導者が台頭した頃です。ノーベル賞シカゴ学派と呼ばれるこの自由主義の分野ばかりから選ばれるような時期でした。

この派閥は徹底的に小さな政府を目指し、政府はでしゃばるな、可能な限り民間に任せるべきだ、それが市場を効率的に回すための最適な方法だと主張します。

国営企業の民営化をはじめとする施策もこの流れを汲んでいるといえるでしょう。(最近の日本では竹中平蔵さんが自由主義の色合いが強いですね)

②政府が積極的に介入したほうがいいよ派

政府はひっこんでろ、という自由主義に対して、政府の役割の重要性を説いた代表者がケインズです。民間の消費が落ち込んだ時は、政府の財政を出動させることで消費を刺激したり、公共事業で雇用を生み出すことが必要である。大きな政府も大事だ、という主張です。この主張は世界恐慌後のニューディール政策などの論拠になっていきます。

最近のアベノミクスなどは、政府が経済に積極的に影響を与えようとしているという点ではケインズ的かもしれません。アカデミアではMMT理論がこの流れを汲んだ最先端なのではないかと思います。(たぶん・・)

③そもそも前提である合理的人間というのがおかしいよね派

①vs②でいろいろやってるけど、経済学が前提としてきた合理的に判断する人間というものがそもそも怪しい。人間は結構不合理だし、ロジカルじゃない判断によって実際経済は動いている。そのあたりをきちんと理論に組み込んでいかないと全然ダメじゃね?というのが③の派閥です。

代表的なのは、ゲーム理論行動経済学と呼ばれる分野です。

近年ではこの分野への注目が高まっており、ノーベル賞ゲーム理論行動経済学の分野からも受賞する人が増えてきました(ここ15年間で3回行動経済学の分野から受賞者が出ました)。国内でも研究している人が多くなってきた印象を持っています。特に東大はゲーム理論が強い印象です。

他にもマルクス主義なんかも大きな派閥ですが、ご存じの通りソ連の崩壊とともにやや衰退したので上記の3つを頭に入れておいてもらえればと思います。では本の紹介に移りたいと思います。 

 

 

資本主義と自由

自由主義の親玉ミルトン・フリードマンによる一冊。フリードマンは良くも悪くも徹底的に自由な市場を志し、実際に政治的なアプローチを通じて自由経済の実現に情熱を傾けました。

個人的には、日本人は不況になるとすぐに政府がなんとかしろ、という意見に傾くように思っており、民間ですべてなんとかしてやろう、政府はひっこんでろというフリードマン的な気概がもう少し必要だと思っています。

そんな思いを込めつつ紹介するのが、この資本主義と自由という本であり、政府の役割はもうここまで!こっから出てくんな!という線引きをいろんな事例を挙げながら一般向けに解説している本書は非常に刺激的で面白いでしょう。とにかく政府を小さく、可能な限り民間に任せよ、というその思想と情熱の強さはさすが親玉です。80年代の政治経済界に最も影響を与えた1冊といってもよく、池上彰さんの「世界を変えた10冊の本」にも選ばれています。

極論が綴られているということを念頭に読んでほしいですが、まずどういう考えかを知ること、そしてあなたはどこに違和感を感じたか、共感したか、ぜひこの1冊をきっかけに考えを深めてもらえたらと思います。

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

 

 

企業家としての国家

フィナンシャルタイムズ誌とハフィントンポスト誌が2013年最高の著書に選んだという一冊。この本では、イノベーションの創出における国家の重要性が強調されているという意味でケインズ的で、著者はイノベーションにとってベンチャーベンチャーキャピタルの役割はもちろん大事だが、国家の役割が過小評価されていると一貫して主張します。(M.フリードマンが聞いたらものすごい剣幕で怒りだしそうな主張です。笑)

本書の概要は以下の通りです。

大きなイノベーションの土台になった基礎研究は、政府からの長期間・多額の投資があってこそ成し遂げられており、ベンチャーキャピタルは良くも悪くも利益追求型で基礎研究が終わり実用化に入ろうとという収穫間近のフェーズで投資に入ってくることが多く、次の技術への種まきという投資には十分に積極的ではない。

例えば、iPhoneにつかわれているタッチスクリーン、GPS、液晶画面、リチウム電池・・・はすべて政府による戦略的な長期投資が行われた技術であり、イノベーションの土台において政府の投資が果たす役割は極めて大きい。

現状、政府が基礎研究という極めて不確実性の高いフェーズで高いリスクを引き受けて投資を行っているにもかかわらず、その役割が正しく認識されていない、そして投資に対して十分なリターンを得られる仕組みが整っていないのが課題である。国家が投資企業の株を持つ、知的財産を管理するファンドをつくるなど背負ったリスクに見合ったリターンを得られるエコシステムを目指すべきである。

私としては、自分の主張に都合がいい事例だけを取り上げているような感覚を少し受けつつ、主張自体には一理あるなと思い、かなり興味深く読みました。また日本では政府系ファンドはVC寄りの領域に近づこうとしている気がしていますが、どちらかといえば基礎研究に戦略的に長期投資する仕組みが大事なのでは、と思いました。

資本主義と自由で振れた思想の振り子をこの本を読んで調整してみてください。笑

 

ケインズハイエク

大きな政府か、小さな政府か、20世紀を通じて激論を交わし続けたケインズハイエク

本書は、専門的な内容には過度に踏み込まず、時代背景や主だった考え方、そして人間ドラマに焦点を当てており、経済学にとっつきにくいが興味がある、という人に最適な本ではないかと思います。

ハイエクの「政府の過剰な市場介入による、不況対策の行き過ぎが、次のバブルの原因を生む」という警告は的を射ているようにも思いますし、ケインズの「だからといって公共投資をしないというのは愚策だ。公共投資を毎年のように期待することはよくないが、不況時には必要だ」という主張もそれもそうかなという気がしてきます。

この本を読んで、まず経済界の激論の歴史を理解し、あなたも論壇にあがろうじゃありませんか。

 

予想どおりに不合理

行動経済学に興味を持ったならばまず手に取るべき本はこの1冊でしょう。

経済学の前提となっているのは合理的な人間です。1万円か9千円をもらえるのであれば1万円を迷わず選ぶような人間です。しかしこの合理的な人間像がどうも無視できないほど現実世界では崩れているらしい。

現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する

報酬なしの頼まれごとならがんばるが安い報酬を出されるとむしろやる気が失せる

同じプラセボ薬でも高額なほうが効く

などなど、我々がいかに不合理な存在であるかをおもしろおかしい実験を通して明らかにしていきます。

 

ミクロ経済学の力

東大のスター教授である神取先生が執筆されたミクロ経済学の教科書。

教科書なので経済学を学ぶわけでもない人にとっては無用の長物といえなくもないんですが、ゲーム理論の解説がずば抜けて優れていること、そして終章 「最後に、社会思想(イデオロギー)の話をしよう」の内容がすべての人に読んでほしい内容になっているため、あえて取り上げさせてもらいました。

もし経済学、特にミクロ経済学に興味があるぞ、という人がいたらこの本を手に取ってみてください。読み飛ばしながらコラムだけかいつまむのでも面白いと思いますよ。

ミクロ経済学の力

ミクロ経済学の力

 

 

多数決を疑う

最近の経済学では、マーケットを正しくデザインし正しく物事が選ばれるようにしよう、というゲーム理論の応用的な分野が発達してきました(メカニズムデザイン、社会的選択論などといいます)。例えば、オークションを一番高値でかつ一番欲しがっている人のもとに正しく品物がいくように設計する、などです。

本書ではより身近な多数決、という選択方法に焦点を当てます。著者の慶應義塾大学教授である坂井先生は、国内ではこの分野のパイオニアの一人といってよいかと思いますが、この多数決に対して

「多数決ほど、その機能を疑われないまま社会で使われ、しかも結果が重大な影響を及ぼす仕組みは、他になかなかない。とりわけ、議員や首長など代表を選出する選挙で多数決を使うのは、乱暴というより無謀ではないだろうか」

とまでこきおろします。

いかに多数決が信用ならない方法なのか、代わりにどんな投票方法が考えられるのか、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。

 

ヤバイ経済学

経済学なんて小難しいからなあ、と思っている人はとりあえずこの本だけ読んでみてください。この本は分類するなら行動経済学の分野の研究に属するかと思いますが、特徴は何よりも取り上げているテーマの面白さです。

中絶の合法化によって犯罪が減ったのはなぜか

日本の大相撲で間違いなく八百長が行われている証拠

生徒の回答を書き換えて成績を良くする教師を見つけ出すアルゴリズムを作ってみた

不動産屋の営業担当者の家は、彼らが担当した家より3%高く売れている

 など、実に好奇心をくすぐられるテーマを扱っています。

データをもとに分析し、仮説を証明していくというアプローチからは学ぶところは多いかと思いますし、数字の面白さを実感できます。数字に強くなりたい、という人も一度この本を軽く読んでみたら数字に強いという意味合いがわかるのではないでしょうか。

 

経済学関連の本の紹介はここまでになります。

また他のジャンルのおススメ本はこちらにあるので、関心があればこちらの記事もぜひ読んでみてください!

 

 

発展途上国を正しくとらえるためのおすすめ本

発展途上国を正しくとらえるための本

例えばアフリカ。アフリカ大陸の北端と南端ってどれだけ離れているか知っていますか?

日本 ースウェーデンの距離です。(約8000km)

アフリカ、なんてラベルはデカすぎる、途上国なんて大雑把すぎる。まずは事実に基づいて、認識の歪みを直すべくファクトフルネスから。

 

なお他のおススメ本記事は以下からどうぞ。


 

FACTFULNESS(ファクトフルネス)

2019年上半期個人的ランキングTop3には入ります。 

世界の貧困層はどの程度減ったのか?

初等教育を受けられる女性の割合は?

ワクチンを受けられる子供の割合は?

ヤフーニュースのコメント欄を見ると顕著なんですが、「最近ほんとに凄惨な事件ばかりでどんどん日本の治安が悪くなっている気がします」というコメントで溢れています。日本の殺人事件の件数は、ここ50年で半減しているんですがね。

なぜ世の中が悪くなっているような錯覚に陥るのでしょうか。上記のような質問を通じてあなたにも世の中悪く見えるバイアスがかかっていることを示した後、なぜそのようなバイアスがかかるのか原因を説明し、そこへの対策を論じています。

世界の常識を学べるだけでも損はないのに、バイアスの原因と対策にまで踏み込んだ稀に見る良書です。 

 

貧困の終焉

途上国の発展に向けて何をするべきか、という問いに対して、大きな主張が2つありました。1つは本書のジェフリーサックスに代表される、積極的に途上国に援助を行う必要があるという主張です。貧困の罠、などともいいますが、簡単に言えば貧困から抜け出すためには教育費用や設備投資などの初期投資が必要であり、それを個人の自助努力によって捻出させるのはなかなか厳しい。したがって初期投資を先進国の支援によって担うことで貧困の底に梯子をかけ、彼らを引っ張り上げる必要がある。そうすれば途上国の貧困の解決に向けて大きな貢献ができるはずだ、という論旨になります。
実際、この主張は影響力があり、この論理が国際機関による途上国への援助を支える大きな論拠となりました。
では、そのような援助には実際に効果が認められたのでしょうか。サックスは大いに効果が認められたと主張しているのは本書を読めばおわかりいただけるところです。それに対して、援助はむしろ悪影響だという主張を展開したのが次で紹介するイースタリーやダンビザ・モヨになります。
貧困の終焉

貧困の終焉

 

 

傲慢な援助 / 援助じゃアフリカは発展しない

多額の援助は途上国の発展にとって有益であったのでしょうか。
イースタリーやダンビザ・モヨは、多額の援助は政府の腐敗を招き、真に援助を必要とする人のもとには雀の涙ほども届くかどうかといった状態で、ほとんど効果はない。むしろ腐敗を加速するという点で有害であるくらいだ、という主張を展開します。
実際のところ、統計学的には援助が途上国の成長に有意に好影響を与えているということはアカデミアで広く合意されるほどには明確に示されておらず、マクロ的な側面で援助の効果を測定しようとすることの限界が明らかにされました。
その結果、援助の効果をもう少しミクロレベルで検証しよう、という動きが顕在化します。その代表者が2019年にノーベル経済学賞を受賞したバナジー、デュフロなのです。(貧乏人の経済学を読みましょう!) 
傲慢な援助

傲慢な援助

 
援助じゃアフリカは発展しない

援助じゃアフリカは発展しない

 

 

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

6~7年前にはなってしまいましたが、開発経済学の分野に大旋風を巻き起こした本です。ファクトフルネスで、意外と途上国の貧困って削減されてたのか。でもどうやって?と思ったあなたにはこちらの本を。

途上国の貧困層は、決して頭が悪いから貧困なのではなく、彼らはおかれた環境の中で極めて合理的に・最適な行動をとっているのだと解き明かしていきます。

そしてその行動原理を理解した上で、対策を行うことが重要なのであると。マイクロファイナンスも教育も衛生対策も。

もう1つこの本で画期的だったのは、ランダム化対照実験という手法を用いて、施策の効果を検証している点です。施策を行った地域と行っていない地域をしっかり比較する、まあ簡単に言えばこれだけなんですが、統計学的な手法として確立し、実際の実証実験にまでガンガン用いているのは素晴らしいです。

専門的な内容を平易な言語で解説した、21世紀に名を残す名書だと思います。

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

 

 

ネクストマーケットー「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略

貧困削減、などと手を差し伸べる対象と考えられがちな途上国ですが、既にそこには大きなビジネスチャンスが顕在化しています。

このネクストマーケットの著者C.K プラハラートは、コアコンピタンスを提唱した経営学の巨人の1人として知られています。その経営学者がいま最も注目しているのが、途上国のマーケットです。

特にBottom of the Pyramid、ピラミッドの底辺(途上国の貧困層)は所得は少ないが圧倒的な人数を抱えており、実はマーケットサイズとしてかなり大きいのではないか、そこを攻略するビジネスモデルは既に機能するのではないか、という仮説を主張しています。

例えばP&Gは、インド市場でボトル型ではなく、1回使い切りのシャンプーを販売し、インドのBOP層の90%にまで浸透させたともいわれています。

これから所得が増え、Bottomとも言えなくなることが間違いないマーケットで、どれだけ早くから存在感を示せるのか、そのためには先進国とは全く異なる消費者の行動様式を理解した上での製品開発・マーケティングが必要なのだとしみじみします。

途上国の繁栄に必要なのは、援助ではなく、まっとうなビジネスなんだと感じられる点でもお薦めしたい一冊。

 

戦略コンサルが薦める読んでよかった本

戦略コンサルは普段どんな本を読んでいるのか?私の本棚からお薦めできる本をピックアップしてご紹介します。

コンサル本は、いろんな方がまとめてくださっていますので、”教養をつける”といった側面を意識したチョイスになっています。偉そうなことは言えませんが、個人的に読んで世界が広がったなという本をピックしているので興味あるものがあれば手にとって頂ければ。

これからも継ぎ足し継ぎ足し、秘伝のたれのごとく更新して増えていく予定です。

※他ジャンルのまとめもつくりました! 

 

目次 

 

コンサルスキルを身につける本 

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

コンサルファームに入ると読め読めと言われる、やたらと読みにくい翻訳のこの本。最初に読んだときは、ウィットに富んだ抽象論という印象があったのですが、実務経験を数年余り積んでからこの本を読みなおすと、非常に刺さる言葉がいくつも出てきます。

問題を解いた先には、問いに紐づいた新たな問題がある。

誰に解かせるかが重要であることもある。彼らの問題ではなく、彼ら一人ずつの問題に変えることで解決する問題もある。

「あーーーー、それよそれ。わかりみが深い。なるほどなあ」と共感を持ってしみじみとこの本を読めたとき、あなたはコンサルになりつつある!?

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

  • 作者: ドナルド・C・ゴース,G.M.ワインバーグ,木村泉
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 1987/10/25
  • メディア: 単行本
 

 

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

社会人なら誰しもが読め読めといわれるこの本。

端的に言えば、解くべき問いは何かを明確にしてから問題を解きに行け、というメッセージの本です。コンサルの文脈でこの本を考えると、特にマネージャーを目指すにあたって大切な要素が解説されているのではないかと思います。

コンサルは大きく3つの職位に分けられます。クライアントのCXOと関係を築き、クライアントの悩みを拾いあげてプロジェクトを受注してくる"パートナー"、プロジェクトにおいて解くべき論点を設定してストーリーを描き実際にプロジェクトを進めていく現場責任者”マネージャー”、マネージャーの下でリサーチや分析・資料作成をせっせと行う実働部隊”スタッフ”の3つです。

この中でマネージャーに求められる最たる能力が「解くべき問いを正しく立てる能力」だと感じています。スタッフのうちから、これを意識しながら仕事を進めることが本質的な成長につながるでしょう。

定期的に読み返したい本です。

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

  • 作者: 安宅和人
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2010/11/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

ストーリーとしての競争戦略

コンサルになる前は、コンサルといえばロジカルシンキングだと思っていました。実際、ロジックも大事ですが、それよりもはるかによく言われるのがストーリーがつながっているかどうか、という点です。ストーリーをつなげるための必要条件がロジックが通っているということだと最近では考えています。逆にいえば、ロジックが通っているだけでは良いストーリーとはいえないということです。

そのストーリーというものを徹底的に紐解き、解説したのが本書になります。よしストーリーに共通しているものはなんなのか、具体的にどういった戦略が良いストーリーなのか。コンセプチャルな話ではなく、経営戦略という文脈の中で豊富な事例をまじえて話が進んでいく点もgood。戦略コンサルの一つのバイブルではないかと思っています。

 

考える技術・書く技術

論理的に書くというテーマでは右に出るものがない本。コンサルは全員読まされる名著であり、「伝えたいキーメッセージを頂点とし、その下をなぜそのメッセージが言えるのかというWhyへの回答で構成したピラミッド構造で思考せよ、記述せよ」ということが説かれた本です。

コンサルは、パワーポイントで資料をつくることがとにかく多いんですが、箇条書きベースで資料のストーリーを書く「サマリ」というものも非常に重要度が高いです。答えるべき問いは何か、それへの答えの仮説は何か、仮説を支えるファクトとしてどんなものが考えられるか、といった資料で伝えたい内容を論理的に書いたものがサマリであり、役職が上がるにつれてサマリの重要性が増します。コンサル1年目で1回、マネージャーが見えてきた頃にもう1回読むべき本だと感じています。

 

世界基準の上司

あなたはコンサルをしていて、潰れそうになったことはあるでしょうか。私は余裕であります。

潰れそうになった経験を持つ人を少しでも減らすために、部下を持つコンサルは全員この本を熟読すべきかと思います。どう指示を出すべきか、どの粒度の細かさがベストなのか、アウトプットイメージはどう握るのがいいのか。明日からすべてつかえます。

最後に本からの引用です。

"「おれも今までこうやって言われて育ってきた」「その怒りのエネルギーを仕事にぶつければいい」、そんなことを思っている人がいないことを心から願っていますが、もしいたとしたら今すぐ即座に直ちにこの瞬間にその考えを改めてほしいです。"

強面上司のあなたは、毎日これを100回読んでからオフィスに来てください。下からのお願いです。

世界基準の上司

世界基準の上司

 

 

伝わる・揺さぶる!文章を書く

「論点を書く。サマリを書く」ということに悩んでいるときに、以前一緒に仕事をした尊敬する上司から勧められた一冊です。本当に、本当に良いことが書いてあります。

  • 書く文章にはゴールがある。誰に読まれて、その結果どのような行動を相手に起こさせるのか、ちゃんと考えられているか
  • 良い答えを導くためには良い問いが必要である
  • 知識や情報を並べただけで、自分の意見がない文章を書いていないか
  • 自分の意見をかけないのは、以下が理由だ
    ①大きすぎる問いを相手にしている
    ②インプットが不足しており、意見を言う資格がない
    ③意見を言うことによって生じるリスクを引き受けるのが怖い

これらの言葉が刺さったあなたはすぐに買って読みましょう。

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)
 

戦略がすべて

戦略とは何か、具体的なイメージを持てない人が多いと思いますが、この本ではAKBの事業戦略からキャリア戦略まで、幅広い戦略のケーススタディが取り上げられているのでこの本を読めば戦略について具体的なイメージを持つことができるでしょう。
g>特に気づきとして重要だと感じた点は、戦略とは企業の経営企画部にいる人や経営層だけでなく、個人のキャリア戦略といったレベルで身近なものであるというメッセージです。
以前、「俺がやればどんな案件も戦略ジョブになるんだよ」と偉いコンサルの方がおっしゃっていた記憶があるのですが、どんな課題に対してもまさに戦略的に考えるというアプローチが取れるということを示した一言かと思います。個人・業務・経営・社会、あらゆるレベルで利用できる価値のあるスキルとして、”戦略的に考える”ということをとらえなおすことができる良本です。

戦略がすべて (新潮新書)

戦略がすべて (新潮新書)

  • 作者:瀧本 哲史
  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: 新書
 

 

 

世界の経営学者はいま何を考えているのか

最近、雑誌やTVなど様々なメディアで活躍されている新鋭の経営学者である入山先生が名をあげるきっかけとなったヒット作。

コンサルは経営というフィールドに近い職業ですが、だからといって経営学を学び、最新の知識を取り入れているような人は稀です。むしろ、アカデミアと実ビジネスの隔たりの強さを感じます。いまだにマイケルポーターかドラッカーあたりしか経営学といって浮かんでこないのがその証拠でしょう。

この本では、アメリカで経営学のPhDを取られたばかりの著者が、世界の経営学ではこんなテーマを扱っている、こんな論説が主流になりつつある、といった内容を丁寧に紐解いていきます。とにかく平易な文章でわかりやすく、隔絶されている経営学のアカデミアと実ビジネスをつなげようという意欲が感じられて私は大好きな一冊です。

組織の記憶力を高めるためには?

なぜ経営者は買収額を払いすぎてしまうのか?

日本人は本当に集団主義なのか?それはビジネスにとってプラスなのか?

事業会社のベンチャー投資に求められることとは?

など、おそらくみなさんの関心にヒットするテーマを扱っているのではないかと思いますので、ぜひ手に取ってみてください。

 

BCGが読む 経営の論点2019

あまりにダイレクトなネーミングなので、天邪鬼タイプの私は思わず避けてしまいそうになるこの本ですが、やはりこのくらいは読んでおいて損はないです。

金融、製造、物流、自動車など幅広い業界のことが記載されているため、普段接していない業界のトレンドや業界課題、解決の方向性が伺い知れます。

何が書いてあるのかなワクワク、というよりも自分の知識の点検をしつつ、知らないところをクイックに吸収するのにちょうどよい、そんな一冊です。

毎年買ってしまう。(経費で落ちるなら。笑)

BCGが読む 経営の論点2019

BCGが読む 経営の論点2019

 

 

BCGが読む 経営の論点2020

BCGが読む 経営の論点2020

  • 発売日: 2019/11/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル

AIの発達によって、人間の職が奪われる。こんな言説が飛び交う時代ですが、あなたはこの意見に反論するならどんなロジックを展開しますか?

本書では、Human vs Machineの二項対立ではなく、人間と機械が協働する領域をミッシングミドルと名付け、その領域の拡大によって人間の新しい雇用は生み出され、高い付加価値を生みだせるのだと提唱しています。

例えば、チェスはマシンが人間を超えたことが有名ですが、どうやらマシンと人間が協力したときが一番強いようなのです。こういった協力をすることで更なる価値を発揮できる領域は多く、それは新しい仕事としてこれから顕在化してくるはずです。

当たり前のようで、AIと人間が協力する領域をコンセプト化した書籍はなかったように思うので、なかなか良い仕事しているのではないでしょうか。

HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル

HUMAN+MACHINE 人間+マシン: AI時代の8つの融合スキル

  • 作者: ポール・R・ドーアティ,H・ジェームズ・ウィルソン,保科学世,小林啓倫
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2018/11/23
 

 

思考と心を整理する本

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

コンサルスキルというよりも、豊かな人生を送るための思考方法が書かれた本といった方が正確かもしれません。ただよくある「よい人生を送るために・・」系の本と違い、知的好奇心をくすぐる学術的な裏付けの紹介とロジカルな文章に大変好感が持てます。

飛行機が予定通りのルートを寸分たがわず飛ぶ確率は0%。飛びながらの微調整が人生にも大事、など。

個人的には昨今の日本の独立・フリーランスブームに刺さるこちらの言葉がお気に入りです。

「どこにも属さない人生を想像すると、あこがれの気持ちやロマンチックな空想をかきたてられるかもしれない。だが、属する組織を持たないと社会があなたを拒絶しようとする。無情な逆風が吹き、ほとんどの人は打ちひしがれる。輝けるのはほんの少数だ。」

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

  • 作者: ロルフ・ドベリ,安原実津
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2019/04/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

嫌われる勇気

アドラー心理学を世の中に広めるきっかけとなった本。

コンプレックスの塊のような男と哲学者が対話していくという形式で進んでいきます。対話形式であるため、これはAudibleで聞くのも非常におすすめです。

アドラー心理学の画期的なところは、原因論を否定し、目的論を主張したところかと思います。人間はむかついたから怒るのではなく、相手を威圧し自分の主張を通すという目的のために怒るというアクションを起こすのだ、という主張です。

原因論の最たるものはトラウマですが、アドラーはトラウマを自分の今の状態を正当化するのに都合がいいから利用されている見せかけの因果律だと切り捨てます。なかなか極端な主張に見えますが、この主張からは変わろうと思ったならば過去に関係なく変わることができる、というメッセージが抽出されていきます。

この本を読むときっと少し心が軽くなると思います。

嫌われる勇気

嫌われる勇気

 

 

苦しかったときの話をしようか

P&Gのアメリカ本社でパンテーンのブランドマネージャーを務め、その後USJに参画しハリーポッターをはじめとするUSJの大改革を主導した日本を代表するマーケティングのプロ、森岡さんによる一冊。

森岡さんの娘さんが就活を迎えるにあたって書かれたプライベートな手紙がもとになっており、ご自身がどのような意識で仕事をしてきたか、どんな困難に直面したのか、キャリアを考えるにあたって何を大事にするべきかが魂のこもった文章で書かれています。

キャリア戦略の基本は、自らの強みを認識しそれを磨き上げること、という主張はわかりやすく、かつ強みのカテゴリーとして、考えることが得意なThinkingの人、人間関係の構築力が高いCommunicationの人、変化を主導することが得意なLeadershipの人の3種類にわけられる、という説明は世の就活生に広く参考にしていただきたい。ちなみに私は極端なThinkingタイプですが、わりとCommunicationもいけるので、とにかく面白いことを知り考えることを磨き上げ、そしてその知識や考えをわかりやすく伝えることで社会に貢献したい、というのが私のコアコンピタンスになっています。

また人はどういうときに一番しんどくなるのか、それは自己評価が低くなった時だ、とP&G米国本社赴任時を振り返るチャプターは数年間社会人を経験した人には大いに刺さると思います。

キャリアに悩んでいる人、そして就活生にぜひ読んでほしい本です。

苦しかったときの話をしようか

苦しかったときの話をしようか

 

 

失敗から学ぶための本

名将野村監督は座右の銘として「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を掲げました。コンサルティングという仕事をしていると、成功事例やベストプラクティス事例を求めるクライアントは非常に多いのですが、成功した理由は多岐にわたり自分に応用するのが非常に難しいという側面があります。

対して失敗した理由はどうでしょうか。これをやったら確実に失敗する、という落とし穴を認識し、それを避けることはむやみに成功事例を分析するより成功の確率を高められるかもしれません。失敗から学びたい、そう思ったときに手に取りたい本を紹介します。

なぜ、間違えたのか?

タイトルの通り、人間はなぜ間違えてしまうのか、その典型的な事例とメカニズムを心理学的側面を中心に解説している本です。

  • なぜ自分だけはうまくいくと思ってしまうのか
  • なぜ自分の力を過信してしまうのか
  • なぜ起こったことに対してあれは必然だったと思い込むのか

など身近なあるある事例をもとにどのような思考メカニズムが作用し、我々を合理的でない判断へと導いているのかを示していきます。軽妙な語り口と相まって非常に読みやすく、楽しめる一冊になっています。

なぜ、間違えたのか?

なぜ、間違えたのか?

 

  

失敗の科学

航空機事故や医療ミス、採用ミスなど世の中で発生する失敗を取り上げ、その原因を究明した一冊。

特に印象に残っているのは、韓国の航空会社において、副操縦士が機長に対して過剰な謙遜表現を使用していたため、機長が副操縦士の進言を重大なものと認識せず、結果大惨事につながってしまった、という事例。日本企業においても誤りに対して強く指摘しにくいカルチャーがあるかと思います。航空会社では、使用言語をすべて英語にすることによってTalk Straightを実現するという手段に出ましたが、日本企業においてもTalk Straightを推進する工夫は必要でしょう。

他にも採用担当者は自らが採用した人物のパフォーマンスは自らの評価に対して影響せず、採用の成否のフィードバックもほとんど受けないから、まったく採用の精度が向上しない、などなかなか痺れる指摘を繰り返しており、非常に刺激的な一冊になっています。

 

 

巨大倒産 - 「絶対潰れない会社」を潰した社長たち

インパクト抜群のタイトルで思わず手に取りましたが、取り上げられている企業をいくつかピックアップすると

  • タカタ - 3代目が世界シェア2位企業を潰した
  • ミサワホーム - 社長暴走でトヨタに乗っ取られる
  • そごう - 日本一の百貨店王の栄光と没落
  • セゾングループ - 時代をつくり自戒した感性経営
  • シャープ - エセ同族経営が招いた天国と地獄

など書きたい放題です。笑

ただこれだけの大企業が没落していった過程を読んでいくと、似たような要因があることに気が付きます。個人的に特に感じたのは、過去の成功事例に固執しすぎて未来への判断を誤る、といった点です。

普段接しているクライアントは大企業が多く、どの企業も大きな成功経験を有しています。しかし、シャープのような企業ですら経営に行き詰まるこの時代、コンサルタントとして成功事例に固執しすぎて行き詰る企業を変えるような仕事をしなくてはと、この本を読んで決意を新たにさせてもらいました。

巨大倒産 ―「絶対潰れない会社」を潰した社長たち

巨大倒産 ―「絶対潰れない会社」を潰した社長たち

  • 作者:有森 隆
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

経済学者たちの日米開戦

日本にとって忘れることのできない”失敗”に太平洋戦争があります。太平洋戦争の失敗の論点は、そもそもなぜ日本はアメリカという大国を相手に戦争を始めるという意思決定をしてしまったのか、という上層部の論点と、なぜ始めてしまった個別の戦いで敗北したのか、という現場レベルの論点の2つがあるでしょう。

この本は、なぜ戦争開始という意思決定をしてしまったのかという上層部の問いに焦点を当て、戦争開始に向けて各国の軍事力や開戦した場合のシナリオを分析した秋丸機関の報告書をもとに戦争に向かっていった意思決定のプロセスを明らかにします。

読んで強く認識したのは、戦争万歳!のような理解不能な論理によって戦争へと突き進んだわけではなく、極めて真っ当な思考を積み重ねたうえで、戦争という博打を打つしかなくなっていったのだという点です。

このまま何もしなければ石油の輸入もできなくなり、100%日本は没落する。ならばわずかな可能性に賭けてでも没落しない光の道を探すしかない。そこに向けて希望的観測を積み重ねながら開戦からの短期決着に光明を見出していったという苦しい意思決定プロセスです。

そしてこの苦しい意思決定プロセスは、官僚的な組織構造を持つ大企業でもしばしば目にするものではないかと感じました。日本は開戦を防げませんでした。ではこれからの日本、そして企業ではどうでしょうか。過去から教訓を得るためにもまずは知ることが大切ではないかと思います。

 

失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究

この本は、始めてしまった太平洋戦争において個別の戦いでなぜ敗北したのか、という現場レベルの論点に焦点を当てています。

ミッドウェー海戦やレイテ島での戦い、ガダルカナル島での戦いなど、戦争の行方を左右することとなった主要な戦いを取り上げており、正しく歴史を知るという意味でも価値がある内容ですが、それ以上に第2章以降で指摘される敗戦の原因からは本当に豊富な示唆が得られます。

陸軍と海軍という相互協力しない過度な縦割り組織、日露戦争では海戦での勝利が戦争の勝利につながったという過去の成功事例に固執し空軍の重要性を甘く見た失敗、もたらした結果ではなく、そこに至るプロセスや組織の人間関係に配慮しすぎた人事評価、戦略の不足を現場の優秀さと精神力でカバー、など指摘される失敗の本質は怖いほど今の大企業にも通じます。

日本最大の失敗から、我々も個人レベルで学び、教訓としていきたいですね。

 

組織について学ぶ本

イノベーションのジレンマ

優れた大企業がなぜベンチャーに負けるのかを解き明かした名作です。主要メッセージである、大企業は無能だから敗れるのではなく、正しく優秀に既存ビジネスプロセスを回すからこそ、イノベーションを起こすことができずに負けてしまうという主張は、今を持って重要性を増しています。

ベンチャーに負けないよう大企業でイノベーションを起こすには、既存組織から分離された新規事業創出組織をつくるべき、という本書後半の主張は、多くの大企業に影響を与えたことでしょう。イノベーションと組織、コンサルタントとしては極めて関わりを持つことが多いテーマになるかと思いますので、 是非読みましょう。

両利きの経営

イノベーションのジレンマの続編というべき内容の1冊。イノベーションのジレンマでは、既存組織で新規事業を立ち上げようとすると失敗しやすいということが説明されました。では、大企業はどうしたらいいのか。その答えとして提唱されているのが両利きの経営です。

新規領域の「探索」を担う機能とその探索を通じて試したものからうまくいきそうなものを絞り込む「深化」、この2つの機能を同時に回していくことがイノベーション創出に不可欠だ、という主張なのですが、本書ではかなりの数の事例をとりあげて両利きの経営を具体的に説明しているため、パッと聞いた感じだと腹落ちしにくいコンセプトではありますが、これらの事例が納得感を醸成してくれます。

新規事業支援、なんてしているコンサルタントはみんな読みましょう。オススメです。

 

THE MODEL

SaaSサブスクリプションインサイドセールス、カスタマーサクセス。
これらの言葉を聞いたことあるけれどそれ以上の知識は持ち合わせていない、という人にぴったりな一冊。著者はこの手の分野の企業ではNo1であるセールスフォースドットコムの元日本法人の元専務執行役員

SaaSやサブスクは売り切り型でなく、最初に購入してもらってからどれだけ継続的に利用してもらえるか、そこからアップセルとクロスセルをどれだけ狙えるかという点が勝負になるわけですが、そのための営業組織が実にロジカルかつ実践的に書かれています。

営業の案件フェーズ管理はどのように行うべきか、そしてなぜインサイドセールスが必要なのか。カスタマーサクセスは専門チームとして立ち上げるべきなのか。それほど重要なのか。そういった営業組織がSaaS事態においては最適なのか、非常に多くの示唆を得られます。

 

教養を高めるための本

方法序説

いきなり面食らうでしょう?デカルト方法序説、聞いたことはあっても読んだことのある人はどのくらいいますか?笑

1637年発行の世界最古のロジカルシンキング本です。デカルトはこの中で当時の社会最大の論点「神は存在するのか」をロジカルに「我思う、ゆえに我あり」の自己証明からステップバイステップで証明しようとしています。

ロジカルに考えるとはこうだ、こうやって堅い大地の上に積み上げればロジックは崩れないのだ、と緻密に頑張るデカルトには敬意を表します。ただ、このなかで体温を生み出す器官はどこにあるのかも証明しようとしているのですが、結論が間違っていると思います。笑

これをお薦めする最大の理由は、「本文100ページ程度で、1~2時間もあれば読み終わる」からです。あなたも2時間で教養人になろうじゃありませんか。

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

  • 作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/07/16
  • メディア: 文庫
 

サピエンス全史

こんなにも面白い本にはなかなか巡り合えない、そう思うような一冊です。
(私は進化生物学がとても好きで、この類の本をよく読みますが圧倒的に知的好奇心が喜んだのはこの本です)

我々人類はどんな旅をしてきたのか、進化生物学、歴史学文化人類学、経済学といった知識を総動員して本書を書きあげた著者にまず尊敬の念がとまりません。

サピエンスの旅路には、3つの重要な革命があったといいます。7万年前の認知革命、1.2万年前の農業革命、500年前の科学革命。まさに我々はいま科学革命の真ん中にいるといってもいいのでしょうが、ここまで俯瞰の目を持って歴史を眺められる本は稀です。

生物学、歴史的な話だけでなく、例えば「企業の利益追求は社会を良くするのか?」といった経済に関する考察も下巻に取り上げられており、まさに知の総合格闘技です。

 

絶滅の人類史

サピエンス全史にも記載があったと思いますが、進化生物学上の発見にはいくつか信じがたいようなファクトが見つかっています。例えば

などがあります。なお、それまで野蛮人として描かれがちだったネアンデルタール人が、どうやら白人の遺伝子にはネアンデルタール人の遺伝子が混じっているらしい、とわかってきたあたりで、綺麗なネアンデルタール人へと絵柄が変わったらしいという噂があります。笑

ホモサピエンスの歩んできた旅路には、近くを歩んでいた類人猿の仲間たちがいたわけですが、なぜいなくなってしまったのでしょうか。コンパクトな本でありつつ、壮大な旅に連れて行ってもらえる良書です。

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

2019年上半期、個人的Top3には入る本です。 哲学で修士を取り、BCGで働いていた著者による一冊。哲学のコンセプトを知っているだけで、どれだけ身の回りの事象を説明できることか、気づかせてくれます。そもそもコンセプトを知らないと身の回りの事象に気が付かないんですね。

例えば、人事報酬制度。著者は、M.ウェーバーカルヴァンが唱えた「予定説」のコンセプトを持って、努力⇒結果⇒報酬、を前提とした一般的な評価制度は必ずしもベストではないのでは、という仮説を説明しています。

あなた方は選ばれた人間だ。高報酬を約束する。あとは選民たるその証を示せ。

我々は選ばれた人間であなたたちとは違う。この程度のことは必ずできる。

こういった予定説的な人事設計は、意外と機能するんじゃないの?という仮説なんですが目から鱗とはこのことですね、面白い。総合ファームにおける戦略コンサル部門なんてまさにこの選民思想で・・・っと。誰か来たようですのでこの辺で。

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

  • 作者: 山口周
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/18
  • メディア: 単行本
 

 

ブラック・スワン - 不確実性とリスクの本質

リスクと不確実性の違いを説明できるでしょうか?
リスクは過去のデータなどを用いて将来起こることが予測されているもの、不確実性は何が起こるかさえわからないもの、と定義されます。つまりリスクは発生確率を予想し対策を講じられるけれど、不確実性はそれが発生するまでそんなことが起こるなんて考えることさえ難しかった、黒い白鳥がいるなんて想像だにしなかったという事象のため、予測して対策するという手法での対応が困難です。

そしてその予測できないが、一度現れると世界をひっくり返すほどの影響を持つ事象のことを著者は「ブラックスワン」と名付けます。この本で徹底的に伝えられるメッセージは、予測はできないよ、という点であり、ブラックスワンへの対策として予測精度を上げるぞ、という方向に走るのは筋が悪いですよ、という示唆が導かれています。

ブラックスワンのようにふわっとしていた概念に名前をつけて思考を深め、世界中に広く啓蒙する、タレブ氏は現代で最高峰のコンセプトメーカーだと私はこの本でファンになりました。

脆弱性 - 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

ブラックスワンにて、予測できないが、一度現れると世界をひっくり返すほどの影響を持つ事象の存在を明らかにし、かつブラックスワンへの対策として予測精度をあげることで対処しようとするのは筋が悪いと強烈なメッセージをはなったタレブ氏の新作。

じゃあ、ブラックスワンにはどう対応したらいいの?という問いに対しての答えが書かれた1作になります。

ここで登場するのが、「反脆弱性」という新たなコンセプトです。脆いの対義語は頑健であることではない。衝撃をしなやかに受け止め糧とする、Anti Fragile/反脆弱性である。という主張にも痺れるものがあります。

「衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。そして冒険、リスク、不確実性を愛する。こういう現象はちまたにあふれているというのに、『脆い』のちょうど逆に当たる単語はない。本書ではそれを『反脆(はんもろ)い』または『反脆弱』(antifragile)と形容しよう」

本書では、この反脆弱性をビジネスモデルにも組織構造にも個人のキャリアプランにも取り入れていこうよ、あなたの人生を考える上での指標の1つに加えていこうよ、と提言がされています。

コロナが世界中に蔓延する、これもブラックスワンだったと私は思います。大きな変化やストレスが起こった時に会社や自分が潰れないようにするにはどうしたらいいか、非常に示唆に富む1冊だと思います。

シン・ニホン

イシューからはじめよ、の著者である天才安宅さんが今の日本が抱える課題と将来どうするべきかを考え抜いたという一冊。

前半は来るAI時代を意識しながら、日本という国の現状をファクトを丁寧に積み重ねながら解明していきます。このようなデータやファクトに基づいたストーリー設計はまさにコンサルタントが日々行っている仕事そのものであり、この本のストーリー展開のロジカルさを含めて、安宅さんの優秀さが改めて伝わってきます。内容も非常に示唆に富んでおり、学生の方でもしこの本を手に取った方がいたならば、論文やエッセイはまさにこのように書くべきというお手本にしてほしい。

後半は日本の現状をどう打開するかという提言が書かれており、個人的には特に日本の大学がどう競争力を獲得していくか、という提言には大いに賛同しました。産官学のフロンティアで活躍されているだけあって、提言の内容も一読し、実現に向けたアクションを考える価値があります。