【GAFA解説~Apple編】Appleは最も成功した高級ブランドである
GAFA、という単語が2018年の流行語大賞にランクインしました。ガーファと読みます。GAFAとは、Google、Apple、Facebook、Amazonというデジタル時代を代表する4つの超巨大企業の頭文字をとったものです。
今更ながら、GAFAってなんでそんなに騒がれているのか、何がそんなにすごいのか、という点をスコット・ギャロウェイ著「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」という本を参考にしつつ、私なりに紐解いていこうと思います。
シリーズ第一弾は、Apple。というわけで早速スタート!
- 作者: スコット・ギャロウェイ
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/07/27
- メディア: 単行本
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GAFAで唯一のモノづくり企業 Apple
AppleはGAFAの中で異端の存在です。というのも、Appleだけがモノづくりを主軸とした企業なのです。他の企業は主にサービスを提供している企業です。
このデジタルでイノベーティブでデータこそが金脈と言われる21世紀においてモノづくりなんてナンセンス。ところがAppleだけは風向きが違います。
2018年9月では、Appleの売上は2655億9500万ドル(30兆円くらい)、利益は708億9800万ドル(8兆円くらい)で利益率は27%です。時価総額は1兆ドルに届こうかという勢いです。対して、例えばトヨタの利益率は8%です。モノを作っている企業としてAppleがいかに異常な利益を上げているかがわかります。
これだけの利益を上げるAppleの戦略とはどういうものなのでしょうか。
「高い価格で多く売る」が基本戦略
Appleの戦略を一言で説明すると「高い価格で多く売る」という点に尽きます。いかに利益率が高いかは説明した通りですが、特に2015年の第一四半期の決算はそれを象徴しています。その期間に全世界で出荷されたiPhoneは18%のシェアを獲得するにとどまりましたが、業界の利益の92%を占めました。
販売価格を見ても、Appleの高価格は揺らぎません。iPhoneは1台749ドル、格安メーカーのスマホなら159ドル、ブラックベリーなら549ドルです。
そう、Appleは単なるハード機器メーカーではないのです。徹底的に高く売ることにこだわってブランドを構築してきた高級ブランドなのです。その意味でいえば、トヨタよりもルイヴィトンの方がAppleに近いかもしれません。
なぜAppleは高く、そして多く売れるのだろうか
「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」の中で、スコット・ギャロウェイは高級ブランドが持つ共通の性質を5つ挙げています。以下の5つです。
- アイコン的な創業者
- 職人気質
- メーカー直営店
- 世界展開
- 高価格
この中で、特にAppleを象徴している性質は、アイコン的な創業者、メーカ直営店、世界展開の3つだと私は感じました。
1. アイコン的な創業者 - スティーブ・ジョブズ-
Appleを語る上で外せないのが、みんな大好きスティーブ・ジョブズの存在です。21世紀最高のカリスマです。離婚した娘の養育費の支払いを拒否しようが、苛烈な社内政治を敷いていようが今更そんなのは関係ありません。
ジョブズのストーリーを至高のものにしているのは、一度Appleを追い出され、その後カムバックを果たし、大成功を収めたという点です。創設⇒裏切り⇒復活というこのストーリー。裏切り&復活のストーリーを世界がどれだけ愛しているのかは、キリスト教を見ればわかります。
あまりに圧倒的なジョブズのカリスマイメージ。これらはそのままApple製品のイメージになりました。Apple製品をつかうことで、ジョブズ的な雰囲気、つまり「イノベーティブ」で「他者とは異なった存在」という雰囲気を纏える、そんなイメージが世の中に定着しました。
徹底的にシンプルさを追求したデザインもジョブズ的な雰囲気の増幅に貢献しています(本では「職人気質」の節で詳しく書かれているので気になった人は本を!)。Appleの価値は性能ではないのです。Apple製品を使っていると「イノベーティブ」で「他者と異なった存在」になったような気分になれる、それが価値なのです。
このブランドイメージは、競合他社との価格競争を回避し、そこそこの性能の製品を高価格で販売することを可能にしました。
3. メーカー直営店(高級感あふれる実店舗)
Appleを高級ブランド足らしめているのは、「ジョブズ的雰囲気」、「シンプルなデザイン」以外にもう一つあります。高級感あふれる実店舗での販売です。
21世紀に実店舗なんて時代遅れ。時代はECでしょ。
それはあなたがトイレットペーパーを買う時の話です。大量生産品を買う時には、楽で便利なEC、それこそAmazonで購入する人が多いと思います。では、ヴィトンの財布を買うときは?エルメスのバッグを買うときは?
私は社会人になってBVLGARIの財布を買うとき、銀座のBVLGARIの実店舗に行って買いました。間違ってもドン・キホーテの最上階で買おうとは思わないし、ECサイトで買おうとも思いません。実店舗の高級感あふれる空気感とハイクラスな雰囲気の店員さんと話しながら買った方が、自分がSomething Specialになれた気がするからです。
Appleは高級ブランドよろしく洗練されたデザインの店舗を出店しました。それもヴィトン、エルメス、カルティエが立ち並ぶ一等地に展開したのです。他の高級ブランドで買い物をするとき同様、Appleで買い物をする姿は1つのステータスです。店舗をガラス張りの透明にして、道行く人にその姿を見せつけたくなるほどに。
実際Appleの戦術は成功しました。Appleの店舗の1平方メートル当たりの売り上げは、約5000ドルで小売業では最高とのことです。第二位はコンビニだそうですが、50%の違いがそこにはあります。
実店舗での高級感あふれる購入体験。これをもって、Appleは高級ブランドになったのです。
4. 富裕層をターゲットにした世界展開
しかし、高価格の商品を少量売っていたのでは、30兆円も売り上げは出ません。世界中でなるべく多く売る必要があります。というわけで世界展開です。
「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」のなかにこんな一節がありました。
"富裕層というのは、地上に存在する他のどんな集団より均質である。"
これ、私の感覚的に非常に腹落ちする言葉でした。どんな国においても、富裕層の嗜好って似たようなものだと私も感じています。ヴィトンやロレックスといった高級ブランドが世界中で展開されているのは、同じ好みの消費者がどの国にも存在するからです。
Appleは自らを1つの価値あるブランドとして世界に認めさせることに成功し、そのために世界中に存在する富裕層をターゲットとすることができ、世界展開が容易になりました。こんなに地域ごとのカスタマイズや商品開発なしで売れる商品も少ないのではないでしょうか。
これによってAppleは世界展開に成功し、高価格にも関わらず「多く売ること」に成功したのです。
まとめ Appleは最も成功した高級ブランドである
Appleが凄いのはテクノロジーではありません。Appleより性能の良いパソコンなんて他にいくらでもあるでしょう。
しかし、スタバで広げたいのはAppleです。イノベーティブな自分を演出するには、Appleの最新機種がふさわしいのです。今までは、着ている洋服、乗っている車、行きつけのレストランがステータスでした。Appleは、そこに持っているパソコン、スマホという新しいステータスの判断基準を創り出しました。
それこそがAppleが成し遂げた最大の功績なのです。
「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」では、Appleが構築した参入障壁についても詳しく解説がされています。よりAppleの詳細を知りたい人は、以下の本を参照してみるのもよいでしょう。
- 作者: ウォルター・アイザックソン,井口耕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: ハードカバー
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