現役戦略コンサルタントが語るブログ

元コンサルがすなるブログといふもの

男もすなるブログといふものを元外資コンサルもしてみん。なんやかんやで今は起業した会社の経営者。

MENU

コンサルが実践するリサーチのコツ

先日、「リサーチのコツを教えてください」という質問をされました。
戦略コンサルとして、人並み以上にリサーチ案件に携わってきたように思うので、今回はリサーチのコツをまとめました。とりあえずWayback machine知らない人はリサーチノウハウ不足しているので読み進めてやってください。マインドセット論はさわりだけで、How論が中心です。

アジェンダはこちら。
1. リサーチ設計を行え
2. まずは詳しい人に相談しろ
3. 効率的にググれ
4. 便利サイトを知っておけ
5. URL管理、元ネタ管理を徹底しろ
6. あえて最後に一番大事なこと。リサーチからどんな示唆を出したいのか、明確にしろ

なお、マインドセット論やリサーチ設計の仕方の詳細はこちらの本など読めばよろしいかと思います。

外資系コンサルのリサーチ技法: 事象を観察し本質を見抜くスキル

外資系コンサルのリサーチ技法: 事象を観察し本質を見抜くスキル

 

リサーチ設計を行え

リサーチにおいて最悪なのは、長時間をかけ「色々頑張ったけど、見つかりませんでした」というものです。せめて「色々頑張った」ではなく、どのような情報ソースにあたり、どう調べた結果なのかを言えるよう、最初にそこを設計する必要があります。

この業界レポートを見て、過去資料を見て、記事検索を行います、ここまで3時間でやるので3時間後にいったんレビューポイント置かせてください、というところまでは上司と握ってからリサーチを始めたいところです。

リサーチわかりました!と0.5秒後にググり始める人は6時間後に、「どうなった?」、「あんま見つかってなくて・・かなり調べたんですけど、、」、「は?」となりがちなので気をつけましょう。

まずは詳しい人に相談しろ

リサーチの初手はなんでしょうか。

私は、「詳しそうな人に情報乞食する」だと思っています。似たようなリサーチはみんなやっているものです。「AIをつかった先進事例」なんて絶対すでに誰か調べています。最大のショートカットになるので、まずは類似案件やっていた同僚に聞くべきです。メールを出してから返信までリードタイムもかかるので、リサーチの論点と出したい示唆を明確にした時点でそれを書いてメール送信です。

少し話がそれますが、どう考えてもこれはデスクトップリサーチでは出ないな、という感覚も大事です。例えば競合の新規事業の主要KPIなんてネットに載ってるわけないじゃないですか。

調査対象の企業に勤めている知り合いに聞く、エキスパートインタビューを仲介会社を通じてセットするなどの方法を取りましょう。

経験上、結局詳しい人に聞いた・もらった情報が刺さる率が一番高いです。刺さる情報なんて、「新しい」か「生々しさ」のどちらかが尖っているときですから、インタビューで生々しさを尖らせた方がいいときもあります。

効率的にググれ

メールを送信したらネットという情報の海へダイブです。ググるときのわざをいくつか紹介します。

画像検索をつかえ

市場規模は、たいていグラフで載っているものです。画像で検索しましょう。

XX業界のベンチャー企業の一覧がほしい。「XX業界 カオスマップ」で画像検索しましょう。
画像検索はかなり時短で筋のいい情報にたどり着けるので、積極的に使いましょう。

筋のいいキーワードを発見しろ

市場規模を調べるときは、「XX業界 市場規模 億円」と検索しましょう。億円つけるとヒット率が上がります。(画像検索もお忘れなく)

またサブスクリプション、ではなく、SaaSと調べたほうが情報が多く出てくることがあります。業界のキーワードにいち早くたどり着きましょう。

フィルタ検索機能をつかえ

フィルタ検索、みなさんつかっていますか。

” ”をつけることで、” ”のなかに入っているキーワードを必ず含む検索結果を出すことができます。コンサル ”激務” なら激務を必ず含む検索結果になります。

一方で、 コンサル -  激務 なら激務を含まない検索結果に絞って表示できます。

また時間軸を設定しての検索も有効です。

XXX .pdfではPDF資料をメインで検索できます。なんちゃら総研、政府系レポートなどはこのPDF縛りでかなり手に入りやすくなります。

こういった小技もつかいましょう。

便利サイトを知っておけ

ベンチャー情報は、CrunchBase
• 1年前のWebサイトを見たいならWayBack Machine
有識者の知見を得るならSlide Share
• 基礎情報はやっぱり日経新聞日経ビジネス
• Bynameで企業調べるなら、テレビ東京オンデマンド

Crunch Base

いわずと知れたベンチャーのデータベース。いつ調達したか、誰から調達したか、いくら調達したか、いまSeriesいくつ?。こういった情報はまずCrunch Baseで調べましょう。VRベンチャーを一覧化したい、というときもここです。

またここってどんなベンチャー?という定性情報を探すときは、TechCrunchに取り上げられているケース多めです。

WayBack Machine

更新される前のウェブサイトが見たい、1年前のウェブサイトが見たい。WayBack Machineなら可能です。いつ更新されたのかもトレース可能です。

例えば、「1500社のお客様にご利用いただいています!」と記載があるWebページなら、1年前に遡れば、「600社のお客様にご利用いただいています!」、と書いてあったりするわけで、これでユーザーの増加数が調べられます。このような時系列を遡って調べるのに便利なのがWayback Machineですのでお見知りおきを。

https://archive.org/web/

Slide Share

Slide Shareにはどこぞのイベントでの講演会資料などが多く載っています。PPTでダウンロードできることも多いのでおすすめです。SaaSビジネス、チャットボット、自動運転、というホットなワードであれば、かなり質の高い資料を無料で手に入れられることがあります。チャットボットのこれとかめちゃくちゃ面白かったです。リサーチは置いといて、趣味で見るのにもいいかもしれません。 

https://www.slideshare.net/storywriterjp/uxwebmaster-camp-aiui

日経新聞日経ビジネス

大手企業の社長へのインタビュー記事など日経ビジネスはハイクオリティな内容が多いです。日経新聞もとりあえずその企業名でざっと検索すれば、大まかな動向は調べられます。

先進的な取り組みをリサーチするときは、日経ビジネスやクロステックなどは情報の粒度が細かく参考になることが多いので、私は検索ワードに「日経」を入れてググることもよくあります。

業界特化の雑誌も出ているので、積極的にそのあたりも見ていきたいですね。

盲点 「カンブリア宮殿

カンブリア宮殿はみなさん見たことあるでしょうか。

テレビ東京で放送している、情熱大陸的な・プロフェッショナル的な番組です。毎回、注目の企業を1つ取り上げ、ひたすら深掘りします。社長のインタビューはもちろん、創業時の理念、今までに味わった挫折、成功のきっかけなど見ていて普通に番組として面白いんですが、冷静に考えてこんなにリッチな内容で企業を知れる情報ソースは他にありません。

ライザップ、バルミューダ、タカタの種(ブロッコリーが世界に広まったのは収穫しやすいブロッコリーの開発に成功したこの会社の功績)みたいなニッチな企業からJR東日本、ゼンリンといった大企業まで取り上げているので知見を広める意味でもぜひ。

そしてテレビ東京オンデマンドで500円課金すると過去放送分を含め、すべてのカンブリア宮殿が見られるのでダウンロードしましょう。そして2倍速にすれば20分あれば見終わるので通勤中に見ましょう。

URL管理を徹底しろ

「再現性のあるリサーチ」。この情報の出典ってなに?と聞かれたときにすぐに答えられないコンサルタントを誰が信用できるでしょうか。大量に開いたGoogleのタブ、ぐちゃぐちゃにコピペしたURL。大惨事です。(私はこれで炎上した経験があります)

すぐにでも誰かにリサーチ結果を引き継げるような属人化していないリサーチが絶対的に大切です。その上で侮れないのがURL管理です。

Excelなどでリサーチ結果をまとめているとき、どの情報がどのURLからとったものか管理しきれなくなることがあります。個人的にお勧めしたいのは、ビジネスチャットツールの活用です。(SlackとかCiscoとかKintoneとかTeamsとか・・)

Excel(PPT・Word)に情報をまとめたらそこに番号を振ります。
「コンサル業界の日本での市場規模は7,659億円だ(*1)」といった感じです。
そしてビジネスチャットでチャンネルを適当に開設して、
「(*1)https://enterprisezine.jp/article/detail/11888」と投稿します。

これでガンガン番号をつけて投稿すれば、Excelとビジネスチャットを照らし合わせることで確実に出典がトレースできます。リサーチ結果をまとめたExcelの見栄えもきれいに保てますし、チャットだと見出しが表示されるので視覚的に情報を探しやすいのがおすすめポイントです。個人的には大量の情報ソースを管理するときはこの方法を取ります。

少ないURL管理で済みそうなときはExcelでCtrlと1を押してから「縮小して全体を表示する」を選択し、そこにURLを投げ込みます。些細ですがExcelの見栄えを保つコツです。

ご参考までに。

最後に、マインドセット

結局は、「リサーチからどんな示唆を出したいのか、明確にしろ」が最重要です。

そのリサーチでどんなことが言いたいのか、全体のストーリーの中で自分のリサーチはどんなメッセージを出すために行うのか、そこを正確に理解することが最重要です。

リサーチのタスクが振ってきた時点で、リサーチによって言いたい仮説があるはずです。たとえば「市場規模調べて」というときは、「市場として十分な規模があり参入すべき」という仮説を証明したい、といったようにです。単に市場規模は15億円でした。とだけリサーチ結果を伝えると、「それ小さすぎだし、仮説のファクトにならんし」とゴタゴタします。

15億円ですが、成長率はCAGRで40%もあります、などといいたいメッセージに即した周辺ファクトを集めることをこころがけましょう。
とてもその仮説を証明できそうにない、というときは確固たる反証リサーチ結果をもって即相談です。

なぜなら、ストーリー全体を修正する必要があり、全メンバーの作業に影響するからです。XX市場に参入すべき、を前提にストーリーを作っているのに、真逆のファクトしかないならストーリーの練り直しです。自分以外のメンバーのタスクに影響を与える要素が出てきた時点で早めの相談をしましょう。ファクトなんですからあなたが怒られることはありません。

ざっとこんな感じでございます。みなさまのリサーチのお役に立てることを願っています。